実質賃金が15カ月連続「前年割れ」…どうして上がらない? 今後の見通しは? 6月勤労統計

2023年8月9日 06時00分
 厚生労働省が8日発表した6月の毎月勤労統計調査によると、物価変動の影響を加味した実質賃金は前年同月比1.6%減で15カ月連続の前年割れだった。5月の0.9%減から下落幅が拡大、賃金が物価に追いつかない状況が続く。
 「額面」といわれる名目賃金(現金給与総額)は46万2040円で2.3%増だったのに対し、実質賃金を計算する際に使う消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)は3.9%も上昇した。
 名目賃金のうちボーナスなど「特別に支払われた給与」が18万9812円で3.5%増えた一方、ボーナスを除いた基本給など「きまって支給する給与」は27万2228円で1.5%増にとどまった。

◆物価は高止まり、基本給は伸び悩み

 春闘で30年ぶりの賃上げ率を実現したはずなのに、なぜ実質賃金はマイナスが続いているのでしょうか。(渥美龍太、原田晋也)
 Q 実質賃金はなぜマイナスなのですか。
  A 物価が賃金以上に上がっているからです。6月の名目賃金は18カ月連続のプラスでしたが、ほとんどの月で消費者物価指数(CPI)の上昇率が上回っていました。
 2023年度のCPI(生鮮食品を除く総合)上昇率予測(日本経済研究センターまとめ)を振り返ると、昨年1月時点が0.65%でしたが、上方修正が続き、今年7月には2.61%になりました。急激な円安や価格転嫁に伴う物価高は予測を超えています。
 Q 岸田文雄首相は「30年ぶりの賃上げ」と春闘の「成果」を強調します。
 A 政府や経団連が発表する春闘の賃上げ率は大企業が中心で、基本的に中小零細企業が集計に入っていない上に、見かけ上の賃上げにすぎない定期昇給分も含まれます。従業員5人以上の事業所を網羅する実質賃金の結果とは、必ずしも結び付かないのです。
 6月の実質賃金は1.6%減ですが、ボーナスなど特別に支払われた分を除いた「きまって支給する給与」をベースにすると2.4%も減っています。日々の消費など生活に影響する実質賃金は「きまって」の方だともいわれます。

◆「安定してプラスになるのは2025年半ば以降」

 Q 先行きはどうなりそうでしょうか。
 A 春闘の結果は、各企業が4月以降の給与に反映させていく仕組みで「6月までに反映されたのは6〜7割程度とみられる」(厚労省の担当者)とのことです。上積みの可能性はまだ残っています。しかし野村総研の木内登英たかひで氏は「日本全体の賃上げは、春闘の結果に見劣りする状況が見えてきた。安定して実質賃金がプラスになるのは25年半ば以降とみており、個人に失望感が出て消費を控える可能性がある」と指摘します。

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