揺れる競泳ニッポン、選手が水連を公然と批判 「結果だけ選手に求めて…」世界水泳で惨敗、声を上げた理由

2023年8月22日 06時00分

世界水泳の女子400㍍メドレーリレー決勝で、レースを終え抱き合う池江璃花子(左から2人目)ら日本女子チーム=7月30日、マリンメッセ福岡で

 「競泳ニッポン」が揺れている。先月の世界選手権福岡大会で惨敗した後、一部の代表選手が日本水泳連盟への不満を公にし、双方が話し合いの場を設ける事態になった。パリ五輪開幕まで1年足らず。足元がぐらついたままでは復権はおぼつかない。(兼村優希)

◆「アスリートファーストではない」

 「世界水泳はかなり厳しい結果。原因のひとつは水連がアスリートファーストではなくなってしまったから」
 今月8日、女子自由形リレーの五十嵐千尋(T&G)はX(旧ツイッター)で胸中を吐露した。「結果だけを選手に求めて、サポートする環境もなく、具体的な対策、改革が無ければ今後も変わることはない」と断じ、「もっと選手の意見に耳を傾けるべき」と訴えた。「投稿をするのにとても勇気がいりました」「発信することが変える一歩だと思いました」と覚悟の大きさにも触れている。
 世界選手権で日本は銅メダル二つに終わり、メダルなしだった1994年以来の低調な結果だった。世界から後れを取る現状を打破するため、選手自らが一石を投じた形だ。男子自由形の塩浦慎理(イトマン東進)もXで、世界選手権に向けて「言葉にできない勝負勘のようなもの」を取り戻すため、海外遠征に自費でも参加したい意向を伝えていたが、認められなかったと明かした。

◆東京五輪の前ほど活動費が…

混合400メートルメドレーリレー決勝で7位となり笑顔を見せる(左から)入江、渡辺、相馬、池江=7月26日

 こうした声を受け、日本水連は15日に選手との緊急ミーティングを非公開で行った。声を上げた2人に加え、池江璃花子(横浜ゴム)や入江陵介(イトマン東進)らが梅原孝之競泳委員長に思いをぶつけた。オンラインも含め、代表選手の約半数の20人ほどが参加したという。
 ミーティング終了後、取材に応じた梅原委員長は「アスリートファーストではなくなった」という指摘に対し、2021年東京五輪の前ほど活動費がなく、「合宿が減っているという課題はある」と答えた。多くの選手が集まる合宿は強化の場であり、コミュニケーションの機会でもある。梅原委員長は「意思疎通がちゃんととれていないのが、不満を持たせてしまった原因」との認識を示し、「お金の問題はあるが、合宿の内容を(選手と)一緒に考えたい」と話した。

◆水連内にも亀裂? コーチがアジア大会を辞退

 日本水連では、指導陣同士も一枚岩とは言えない。杭州アジア大会(9月23日開幕)の日本選手団入りが決まっていた平井伯昌のりまさコーチが、今月になって派遣を辞退した。世界選手権を含めて以前から、強化方針に食い違いを感じていたという。平井氏はパリ五輪に向けたプロジェクトチームのリーダーも務める。早急に強化体制を立て直さなければ、世界との差は広がるばかりだ。

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