<新型コロナ>観客の「密」避けられず 夏の催し、再開見通し立たず

2020年6月3日 07時11分

昨年の水戸黄門まつりの提灯行列=2019年8月、水戸市で

 新型コロナウイルスにより、県内でも夏を彩るイベントが次々と中止に追い込まれている。県は8日にも、大規模イベントの開催自粛を緩和するが、引き続き「密」にならないよう求める。このため、人との距離をとるのが難しい花火大会や祭りの再開の見通しは立たない。そんな状況で苦境にある花火職人らが1日、感染収束を願い、夜空に大輪を咲かせた。(宮本隆康、水谷エリナ)

激減

 「飲食店などの困っている人も、頑張ってくれる医療従事者も、上を見て一時でも気持ちが和らいでくれたら」
 土浦市内の霞ケ浦の湖畔で一日夜、七十五発を数分にわたり打ち上げた山崎煙火製造所(つくば市)の山崎芳男社長(70)は、そう願いを込めた。
 この日は、花火業者の有志が全国各地で一斉に花火を打ち上げ、山崎さんも参加した。
 山崎煙火製造所は、土浦全国花火競技大会などで内閣総理大臣賞を何度も受賞している。しかし、予定していた今夏までの各地の花火大会はすべて中止になった。収入は激減し、約三十人の従業員には休んでもらっているという。
 「この仕事を六十年以上続けているが、こんなことは初めて」と山崎さん。今回の打ち上げは「三密」状態を避けるため、場所などは事前に公開されなかった。「本当は大勢の人に集まって見てほしいが…」と複雑な表情も見せた。

大勢

 多くの人が毎年、楽しんでいる花火大会は、中止の発表が相次いでいる。
 大洗町では七月二十五日に開催予定だった大洗海上花火大会を取りやめた。町商工観光課は「大勢が来場するイベントで密を避けられない。来場者の安全確保、地域の感染防止の観点から中止の判断になった」と説明する。
 昨年は二十五万人が訪れた境町の利根川大花火大会も同様だ。例年、七月中旬に開催しているが、今年は東京五輪が開催予定だったため、八月十日に日程をずらして開くことになっていた。町観光協会は「花火業者から、花火大会の仕事がすべてなくなったと聞いた。客に元気を与え、業者を支援するためにも、来年は開きたい」と話した。
 六月二十日に開催予定だった取手市のとりで利根川大花火(例年は八月第二週に開催)なども取りやめとなった。

機会

 水戸市の夏の風物詩になっている「水戸黄門まつり」は七月十八日に花火大会、八月下旬に本祭を開く予定だったが、中止に。例年、八月第一週の週末の開催だったが、昨年から花火大会のみ前倒しにし、今年は五輪開催に伴い、本祭も時期をずらして開くことになっていた。
 まつりの目玉の一つは、昨年から始まった「提灯(ちょうちん)行列」。演者や市民らが提灯を持って街を練り歩くイベントで、今年は提灯の数を増やし、規模を拡大することを企画していた。
 水戸市の老舗提灯製造会社の一つ「鈴木茂兵衛商店」の鈴木紘太さん(37)は「まつりが中止になり、提灯に触れてもらう機会が少なくなっている。来年、無事に開催されることを願っている」と話した。
 毎年八月に国営ひたち海浜公園(ひたちなか市)で開かれる国内最大級の音楽イベント「ロック・イン・ジャパン・フェスティバル」も、安全確保の難しさを理由に中止された。

霞ケ浦湖畔で打ち上げられた花火=1日夜、土浦市で

◆「社会的距離」の要請続く

 県による外出自粛や休業の要請は八日にさらに緩和される見通しだ。
 外出自粛や休業を要請する際に感染状況を四ステージに分けた県独自の基準によれば、現状は、感染がおおむね抑制されているステージ2に当たる。
 具体的には、イベントの目安として「屋外なら二百人以下かつ二メートル程度の距離を確保、屋内なら百人以下かつ定員の半分以下」としている。
 これが緩和され、ステージ1となる。県は五日に具体的な目安を示す方針で、県中小企業課の担当者は「ステージ1で人数制限を設けるかなども含め、イベント開催についてどの程度、お願いをするかを検討している」とする。
 ただ仮に、ステージ1になりイベントの人数制限がなくなっても、県は引き続き、人との距離を一メートル以上とる「社会的距離」を求めていくことから、不特定多数の人が密集しながら行き交う花火大会や祭りの開催は難しい。
 社会的距離の必要性がなくなるのは、感染の収束を待たなければならず、再開には時間がかかりそうだ。(水谷エリナ)

関連キーワード


おすすめ情報

茨城の新着

記事一覧