環八雲 東京湾、相模湾の風が衝突

2020年7月28日 08時08分

都道・環状8号に沿って浮かぶ環八雲

 夏の穏やかに晴れた午後、東京都内の東部を走る都道環状8号(環8)の上空に、ルートに沿うように雲が連なることがあります。「環八雲」です。環8は渋滞の発生が多いため、「排ガスの影響で生じるのでは」といわれることもありますが、実際はどのようにできるのでしょうか。
 「環八雲」は、夏の暑さをもたらす太平洋高気圧が強く、弱い南風が吹いている時に現れることがあります。環8は首都高速や東名高速とも接しているため、終日交通量が多い道路として知られています。このため、巻き上げられた排ガスが雲を作り出しているとして、公害の象徴と見なされることもありました。
 たしかに細かい排ガスに水蒸気がくっつくことで雲ができますが、それだけでは「環八雲」はできません。水蒸気をたっぷり含んだ湿った風が上昇して、上空で冷やされる必要があります。その上昇気流を生み出すのは、東京湾から吹く南東の風と相模湾から吹く南西の風です。二つの風は環8周辺でぶつかり合い、行き場を失って上空に上がることで雲になるのです。
 風が上昇するのには、「ヒートアイランド現象」も影響しています。都心部はアスファルトやコンクリートで舗装されており、熱がたまりやすくなっています。このため、暖められて軽くなった空気が上昇しやすくなっています。「ヒートアイランド現象」に注目すれば、「人間活動による雲」という見方も、あながち間違ってはいないといえます。
 「環八雲」は、東京湾と相模湾からの穏やかな風がぶつかり合って生じます。しかし、上空に寒気が張り出している時に、この二つに加えて鹿島灘からの北東風が激しくぶつかり合うと、ゲリラ豪雨となる恐れもでてくるので注意が必要です。 (布施谷航)

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