「協同労働」って何? 法案成立すれば どんな働き方できるの<Q&A>

2020年10月17日 05時50分
労働者協同組合法案が成立すれば、どんな働き方ができるようになるのでしょうか。(坂田奈央)
 Q 協同労働とは。
 A 一般的な会社員は、企業の命令に基づいて働き、経営に関与しません。出資者は株主で、企業は株主への配当も重要な経営目標とします。これに対して協同労働は、働く人1人1人が出資して「労働者協同組合」をつくり、働く人の意見を運営に反映させます。法案では
(1)組合員が出資
(2)組合員の意見を反映
(3)組合員が組合の事業に従事―の3原則を定めました。
 低賃金労働を防ぐため、労働者協組と組合員が労働契約を結ぶことや、組合員の出資口数にかかわらず議決権や選挙権を平等とすることも定めています。
 Q 誰かに雇われずに主体的に働くことで、働きがいを感じられそうですね。
 A そこが大きな狙いです。地域社会をより良いものにする目的もあり、住民がお金を出し合って労働者協組を立ち上げ、地域の問題を解決していきます。
 Q 現状、こういう働き方はできないのですか。
 A 現行法では、労働者協組のような法人形態は存在しません。似た組織として企業組合やNPO法人があります。ただし、企業組合は組合員が自ら出資・運営はできますが、設立時に都道府県知事の認可が必要。NPO法人は、働く人の出資が認められず、事業も福祉や観光振興など20分野に限られます。
 Q 逆に、協同労働で心配なことはありますか。
 A トップの人選や給与など、あらゆることを働く人たちが話し合って決めるので、意思決定に手間がかかる側面はありそうです。ただ、そうした議論の過程こそ大切でもあります。事業を採算ベースに乗せられるかも重要な問題です。
 Q 労働者協組は簡単に設立できるのですか。
 A 3人以上の発起人がいれば、官庁の認可などは不要です。
 Q なぜこうした働き方が必要とされたのですか。
 A 現代社会で働く人たちは、能力を生かして楽しく働けているのか。地域で必要とされる仕事をしているのか―という問題意識からです。1990年代から法制化の取り組みが続けられてきました。新型コロナウイルスの影響で廃業や雇い止めが増え、将来不安が増す今、労働者協組によって「よい仕事」が生み出され、生き生きと働く人が増えることが期待されます。

◆労働者協同組合法案の要旨

 【目的】
 組合員が出資し、それぞれの意見を反映して事業が行われ、組合員自ら事業に従事することを基本原理とする組織に関し、設立、管理その他の事項を定める。多様な就労の機会創出を促進し、地域の需要に応じた事業を促進する。
 【労働者協同組合】
 基本原理を通じ、持続可能で活力ある地域社会の実現に資する目的のものでなければならない。
 組合員と労働契約を締結しなければならない。
 組合員の議決権及び選挙権は、出資口数にかかわらず平等。
 営利を目的に事業を行ってはならない。
 特定の政党のために利用してはならない。
 労働者派遣事業を行うことができない。
 組合の設立は準則主義(官庁の認可は不要)。3人以上の発起人を要する。
 役員として理事3人以上及び監事1人以上を置く。
 毎年度の剰余金の10分の1以上を準備金として積み立てなければならない。
 毎年度の剰余金の20分の1以上を就労創出等積立金として積み立てなければならない。
 組合員の知識向上のため、毎年度の剰余金の20分の1以上を教育繰越金として翌年度に繰り越さなければならない。
 【その他】
 法律は一部を除き、公布後2年以内に施行する。
 施行の際、現存する企業組合またはNPO法人は、施行後3年以内に、総会の議決により組織を変更し、組合になることができる。

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