<ふくしまの10年・イチエフあの時 続く苦闘編>(6)「漏れるに決まってる」

2021年1月12日 07時36分

汚染水漏れが発生した地下貯水池で、対応に追われる作業員=2013年、東京電力提供

 二〇一三年四月五日夜、東京電力から報道機関に電話連絡が入った。福島第一原発(イチエフ)の地下貯水池で汚染水漏れが起きた可能性が大きいという内容だった。
 上部に送電線がある場所ではクレーンが使えず、タンクが設置できないため、地下に池が造られた。貯水池は深さ数メートルの穴に、粘土層と三重の遮水シートを施工しただけの簡易な造り。東電は、新しい除染装置が稼働し、ストロンチウムなども除去した上でリスクの低い処理水を入れる予定と説明していた。
 ところが東電はタンクの残り容量がほぼ底をついた一三年の年明け早々、説明もないまま二万七千トンの汚染水を地下池に入れ始めた。帳尻を合わせるため、池の容量をタンク容量が増えたように装って公表していた。
 池から漏れた水は推定百二十トン。池には二万数千トンの汚染水が残り、また漏れる可能性がある。現場は対応に追われた。空きタンクに移送し、足りない分は何としてもタンクを新設しなければならない。漏れの状況を監視する井戸の新設も必要になった。
 作業員の一人は「タンクが足りなくて応急的に移したんだろうけど、シートを張っただけじゃ漏れるに決まっている。トラブル続きで大型連休も返上。以前いた人も呼び戻され、休憩時間も惜しんで作業している」と語った。
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