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健康・カラダのこと

高齢者が食べない原因と対策。食欲不振の時に試したい食事について解説

高齢者が食べない原因と対策。食欲不振の時に試したい食事について解説

高齢になると、身体的・精神的な原因によって食事が摂りにくくなることがあります。高齢者がご飯を食べないと栄養不足によって生活の質が低下し、健康維持を脅かす問題につながる可能性もあります。本記事では、高齢者の食欲不振の原因や対策について解説します。

監修者 SUPERVISOR
管理栄養士/食生活アドバイザー/フードスペシャリスト/食品衛生管理者 古山 有紀

武庫川女子大学生活環境学部食物栄養学科卒業。
管理栄養士として病院に勤務し、患者様の栄養管理及び栄養指導に従事。
糖尿病患者や腎臓病患者を中心に、病状の進行を防ぐための食事指導を行う。食事と健康、美容に関する記事を中心に管理栄養士ライターとして活動中。

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高齢者が食べない原因は?

高齢者は、若いときとは違った原因でご飯を食べない場合があります。高齢者の食欲がなぜ低下するのかを理解した上で、必要に応じた対策を執ることが大切です。ここでは、高齢者がご飯を食べない原因を解説します。

①加齢

高齢者は、老衰による身体的な変化によって食欲が低下し、ご飯を食べないことがあります。まず、胃や腸など消化器官の機能低下によって食べ物が胃に残る時間が長くなり、空腹を感じなくなることや、噛んだり飲み込んだりする能力の低下によって食べる意欲がなくなることなどが原因となります。

老衰とは、加齢とともに心身の機能が徐々に衰えていくことです。老衰は、誰にでも訪れる自然な現象であって避けることはできません。しかし、食欲低下については、食事の工夫次第で防ぐことができます。それぞれの方の状況に応じた対策を講じていきましょう。

②病気

病気が原因でご飯を食べないこともあります。高齢者の場合、持病や服薬の影響で食べない可能性も考えられるため、体調に異変を感じたらできるだけ早めに医療機関を受診するようにしましょう。

③環境

一人暮らしの高齢者が、独りでの食事を楽しいと感じられないような環境もご飯を食べない原因になります。独りの食事では、食事の用意が負担になって食べないようになったり、簡素な食事で食欲が湧かなくなることもあります。

家族や親しい友人と一緒に食事を摂ったり、外食して食べる環境を変えてみるなど、食事を楽しめる環境づくりも大切にしましょう。

④精神的ストレス

介護してくれる方に対して気を遣ったり、食べること自体にストレスを感じてご飯を食べない場合もあります。精神的ストレスは胃腸の状態にも影響するため、無理に食べさせることはおすすめできません。高齢者が食べないときには、精神的ストレスを抱えていないか、慎重に見極める必要があります。



高齢者の体重減少についてさらに詳しく知りたい方は、こちらをご一読ください。

高齢者が食べないことで引き起こされるリスク

高齢者があまり食べなくなると、健康維持を害する多くのリスクを引き起こします。ここでは、高齢者が食べないことによって生じる問題を解説します。

低栄養

低栄養とは、活動に必要なエネルギーや筋肉、皮膚、内臓などの身体をつくるたんぱく質やビタミンなどが不足した状態を指します。高齢者が食べなくなると低栄養になるリスクが高くなります。

低栄養になると筋肉量が減り、立つ、歩くなど日常的な活動に必要な運動能力が低下します。運動能力の低下によって日常の活動が減ると、お腹が空かずに食べない、という負の連鎖に陥ってしまうのです。

さらに、高齢者の低栄養では骨折のリスクも増えます。高齢者が骨折すると、運動量が極端に減って筋肉量も落ち、老衰が進行します。そのまま寝たきりになるなど介護が必要な状態になってしまう場合もあるため、とくに注意が必要です。

脱水

脱水は、体液が失われて必要な水分や電解質が不足している状態です。加齢とともに、体重に対する体内の水分量は減少し、高齢者では体の約50%となります。若い頃と比べて約10%少なくなるため脱水になりやすいのです。

高齢者はのどの渇きを感じる「口渇中枢」も衰えるため、水分が必要な状態でも気づいていなかったり、トイレに行くのを嫌がって意図的に水分摂取を避けている場合もあります。もともと嚥下障害や食欲不振で十分な水分が摂れず、さらに服薬による利尿作用で水分の排出量も増えるなど高齢者は脱水のリスクが高くなります。

あまり食事をしない高齢者は食物に含まれる水分を吸収できない為、脱水状態になり易くなります。脱水は、脳梗塞や心筋梗塞などの重大な病気の引き金にもなるため、食事をしない場合でも水分はしっかり摂るよう対策が必要です。

低血糖

低血糖は、血糖値が正常範囲以下に下がった状態を指し、めまい、疲労感、眠気、冷や汗などの症状を引き起こします。血糖値は食事によって上昇するため、高齢者があまり食べないと低血糖になるリスクが高くなるのです。

高齢者に慢性的な低血糖が続くと、心身共に老い衰え、健康障害が起こりやすい「フレイル」と呼ばれる状態に陥りやすくなります。フレイルになると、病気でなくても生活に介護が必要になる場合もあるため、注意が必要です。

このように、高齢者にとって食べないことは、さまざまな問題を引き起こす可能性があるのです。生活の質を落とさないためにも、食べる工夫が必要です。

高齢者が食べないときに試したいこと

高齢者が食べないときには無理に食べさせるのではなく、食べられる環境を整えてあげることが大切です。ここでは、高齢者が食べないときに試してほしい対策をご紹介します。

少なめに盛りつける

ボリュームのある食事が目の前に置かれると、高齢者は食べなければならないというプレッシャーで食欲が低下したり、見るだけでお腹いっぱいになってしまい食事をしない場合もあります。少なめに盛りつけることでプレッシャーをなくし、食べやすくしてみましょう。

少量の食事でも「完食できた」という経験が自信につながり、食べる意欲を湧き立たせることもあります。さらに食べたいと思ったときには、料理を追加するようにしましょう。

楽しめる環境をつくる

高齢者にとって食べるときの環境も大切です。一人暮らしの高齢者では、食事を楽しいと感じられず食べる意欲を失ってしまう場合もあります。家族や仲のよい友人と食べる時には、楽しい雰囲気で食欲も湧いてきます。たまには気分を変えて外食するなど、食事の環境を変えることで食欲が高まる工夫をしてみましょう。

好きなものを食べる

食欲がなく食べたくないときでも、好きな物なら食べられるという高齢者の方も多くいらっしゃいます。そのようなときには、好きな物を食べて食事を楽しむようにしましょう。食べているうちに食欲が湧いてきて、さらに食べたいと感じる場合もあります。

ただし、毎食好きな物ばかり食べていると栄養バランスが偏ります。とくに高齢者は味覚が鈍くなることで、濃い味付けを好む傾向があります。インスタント食品などは塩分の過剰摂取につながるため、食べ過ぎないようにしましょう。

食べたい時に食べる

1日3食決まった時間に食べることは生活リズムを整える上で大切ですが、無理に食べる必要はありません。義務的に食べることで食事に対する嫌悪感がさらに高まることもあります。

少し身体を動かして「お腹が空いたな」と感じたときや、外出先で美味しそうな物を見つけたときなど、食べたいと思ったときに食べると食事を楽しむことができます。1食に食べられる量が少ない時は数回に分けて食べるなどの工夫も取り入れ、1日の中で必要な栄養を補うようにしましょう。

水分をしっかり摂る

食事から摂取している水分は意外と多いため、高齢者は食事をしないことで脱水に陥ってしまう場合もあります。脱水が原因で食欲が低下することもあるため、水分をしっかり摂るよう心がけましょう。

脱水を防ぐ対策として、起床時や運動後、入浴後といった汗をかいた後にコップ1杯の水や経口補水液を飲む習慣をつけるとよいです。また、食事の献立に味噌汁やスープを取り入れると、食事からの水分補給も可能です。高齢者の脱水予防として意識的に取り入れてみてください。

高齢者が食べないときにおすすめの食べ物

のどごしのよい食べ物

のどごしのよい食べ物は、高齢者に食欲がないときでも食べやすいためおすすめです。水分量も多く水分補給もできるため、食欲がないときや体調が優れないときに取り入れてみてください。

のどごしのよい物

  • お粥
  • 雑炊
  • うどん
  • そうめん
  • 茶碗蒸し

冷たい物

食事をしたくないときでも、冷たくてさっぱりしたものは比較的食べやすいとされています。補食としても取り入れやすいため、冷蔵庫に常備しておくとよいでしょう。

冷たくて高齢者に食べやすい物

  • ゼリー
  • ヨーグルト
  • プリン
  • アイスクリーム
  • 果物

プリンやヨーグルトは、高齢者に不足しがちなたんぱく質を補うこともできるためおすすめです。ただし、食べ過ぎると糖分の摂り過ぎになるため、1日1個程度にしましょう。

軟らかい物

噛む力が衰えて食べることが苦痛に感じるときには、軟らかい物を試すのもおすすめです。食事を細かく刻んだり、ペースト状にしたものにトロミをつけた餡をかけるなどの工夫でも、食べやすくなります。

軟らかく高齢者に食べやすい物

  • 蒸しパン
  • 豆腐
  • 温泉卵


高齢者の食事についてさらに詳しく知りたい方は、こちらも参考にしてみてください。

規則正しい生活を送るのも大切

体を動かす

身体を動かさずにいると食欲が湧かないため、食事をしない原因になります。日常生活の中で意識して身体を動かすことで空腹を感じ、食べたいという意欲も出てきます。激しく運動をする必要はありませんが、散歩や家事などで身体を動かすよう心がけましょう。

十分な睡眠をとる

十分な睡眠がとれないと慢性的な疲労感があったり、体調不良の原因になるため食事をしない原因につながります。高齢者はトイレの不安や眠りが浅くなるなどの理由により、十分な睡眠がとれていない可能性もあります。

良質な睡眠をとるために、入眠の3時間前には食事を終えるようにしたり、ゆっくり入浴して気持ちをリラックスさせましょう。

ストレスをためない

ストレスは高齢者が食べない原因となります。また、食事自体がストレスになっている場合もあるため、無理に食べようとすることもやめましょう。

ストレス解消法としては、スポーツで身体を動かす、友人とおしゃべりする、趣味の時間をつくる、など自分の好きなことをする時間をつくることをおすすめします。日頃からストレスをためない生活を心がけましょう。

食欲不振にならないよう、食材や環境などを工夫しましょう

この記事のまとめ

  • 高齢者が食べない原因は、加齢、環境、病気、ストレスなどさまざまな要因がある
  • 食べないことで低栄養、脱水、低血糖など健康リスクも高まる
  • 食欲がないときには無理に食べようとせず、食べられるものを好きなときに食べるようにする
  • 食事をしないときでも水分はしっかり摂る
  • のどごしのよい物、冷たい物、軟らかい物など食べやすい物を取り入れる
  • 食べたいという意欲が湧くよう、食事以外の生活習慣も改善する

高齢者が食べない原因は多岐にわたり、食べたくないときに無理して食べる必要はありません。しかし、食事から摂る栄養は、健康を維持するために必要不可欠です。

食べることがストレスにならないよう、食べたいときに食べる、好きな物を食べる、食べる環境を変えてみるなど、食事が楽しくなるような工夫をしましょう。

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