結局、政治のニュースがよくわからない……「公民」で学んだ内容をリアル社会に落とし込むコツは?

先輩に聞く

2022/05/07

日々刻々と変わる、世の中の状況。ニュースを見ていると、「授業で習ったはずだけど、どういう意味だったっけ?」と感じる場面もあるのではないでしょうか。わからない部分は学び直せばいいと思っていても、結局どこから手を付けたらいいか戸惑ってしまう方もいるかもしれません。

「公民の授業で習っても興味が持てなかったり、先生の教え方が合っていなかったりして政治に苦手意識を持つ人は一定数います。生活に密接している政治は、コツコツと継続して学ぶ力も大切ですが、学習のコツがあるんですよ」と話すのは中学受験指導塾で社会科を教える馬屋原吉博さん。

政治を含む「公民」について基礎から学び直す方法と、その必要性について聞きました。

「制度ができた背景」と「言葉の意味」にこだわって

――政治を学び直す際に、大切なポイントはありますか?

学び直しをする際、押さえておくべきポイントが2つあります。1つは、制度の背景にある思想や考え方を学ぶことです。政治とは生活するうえで必要な仕組みのこと。仕組みができた背景には、必ず理由があります。それを一つひとつ押さえていきましょう。

たとえば、「日本国憲法が国の最高法規である」と定められていますが、その理由をご存じですか? 答えは人によって差が出るところではありますが、ひとまず「日本国憲法は『国民の人権を守る』という使命を帯びているから」という説明がされるケースが多いことは知っておいたほうがよいでしょう。

学生時代の社会科の試験では、やみくもに用語を暗記させられた方もいると思いますが、ただ用語を覚えるのではなく、その事柄の背景を理解したうえで覚えることが大切なのです。

もう1つ、言葉の意味にこだわって勉強しましょう。社会科の中でも、政治を含む「公民」は抽象度が高い科目。地理分野ならば日本地図や写真などが教材として使いやすいですが、政治について学ぶ際は、言葉の意味を言葉で理解しなければならないことがほとんどです。

たとえば、「日本国とは何ですか」と聞かれた時に、地図で日本を指したとしてもそれだけでは答えになりません。国とは「日本列島」だけでなく、風土や制度、歴史や文化を含む概念だからです。

政治は、言葉で表すしかない抽象的な存在。だからこそ、子どもの頃には理解が難しく、苦手に感じた方も多いでしょう。

でも、大人になったら語彙力も増え、理解できることが増えているはず。政治は抽象的な存在だと理解したうえで、制度が作られた背景と用語の意味を考えながら学んでいくことが大切です。

学び直しに役立つのは、中学受験生向けの教材

――いざ、「学び直そう!」と思った時、どこから勉強を始めるのがいいのでしょう。

地理や歴史の知識が土台にあったほうが政治を理解しやすいですが、学び直しの観点で考えると、本人の生活に密接した部分から学んでいくといいと思います。

身近な例としては選挙。18歳以上になれば、選挙は自分の生活の一部になります。「なぜ選挙があるのか」など身近なところから疑問を見つけて、一つずつ学んでいくといいと思います。

――学び直しに使える、おすすめの教材はありますか?

個人の知識量にもよりますが、今はプロの授業を動画で比較的安く受講できる時代です。「スタディサプリ」や「学びエイド」といった動画サービスを利用できる環境にある場合は、それを活用するのがいいのではないでしょうか。

特に中学受験生向けの教材はおすすめです。中学受験の受験範囲は、社会に出たときに必要となる政治のレベルを網羅しているんです。加えて、教材は小学生でも飽きずに興味を引くよう工夫されています。受験生向けだから体系立てて作られているのもポイントですね。

――政治を解説しているYouTubeもありますよね。

いわゆる「インフルエンサー」が配信する動画で学ぶ際は注意が必要です。

何かを断言する痛快さはエンターテイメントとして優秀ですが、実際の世の中はそこまで単純ではないことがほとんどです。クリエイター個人の思想が強く出ていたり、エビデンスに欠ける情報がまぎれていたりすることもあります。もちろん、そういうものと割り切って楽しむ分には問題ありません。

一方、受験生向けの教材や塾の先生たちは、個人の思想性を売りにするとクレームにつながりやすい。大学受験予備校のテキストなどには思想性が強く出ているものも少なくありませんが、中学・高校受験レベルで世に広く出回っているものに関しては、比較的、政治に対してフラットな立場で解説をしているものが多いです。

「わかりやすさ」をウリにした動画などはあくまで「とっかかり」として活用し、そのあとは、ある程度、自分のレベルにあった受験生向けの教材などを活用するのがおすすめです。

――学び直しを始めたときに、つまずきやすいポイントはありますか。

コツコツ学ぶ必要があることと、どこまで学べば、「政治を理解した」ことになるのか、悩む方がいるのではないでしょうか。

大人であれば、生活に密接したところから学び直した方が理解も速いです。しかしその反面、自分の勉強した範囲が政治全体の中でどういう立ち位置にあるのか、わからなくて悩む方もいると思います。

「政治を理解した状態」とは、頭の中で全体像を思い浮かべられるかどうか。つまり、公民の教科書の目次が頭に入っていて、「最低限、この項目については他人に説明できる」という状態なんです。

そういう意味で、受験生向けの教材は、体系立てて授業が構成されていますから、政治知識全体の中でどの部分を学んでいるかがわかりやすいので、おすすめします。

自分の考えがまとまらないときは、知識や意見をたくさん集めて

――ニュースでは政治の情報がどんどん更新されていきます。どうすれば、新しいトピックを追い続けられるでしょうか。

確かに、政治の表面的事情はめまぐるしく変わっていきます。しかし、その背景にある考え方はちょっとやそっとでは変わらないんです。

政治の学び直しのポイントでお伝えした「制度の背景」をきちんと学んでいれば本質が理解できているはず。だから、ニュースをなぞるだけで十分ついていけると思います。

2022年3月に、「新型コロナウイルス禍の影響で受給額が減る年金生活者へ、現金給付金を出す」というニュースが話題となりました。

国民から集めた税金を誰のために使うか、は政治の大きなテーマのひとつです。このニュースの背景には、限られた予算を「お年寄り」にふるのか、あるいは「子育て世代」や「若者」にふるのか、という根が深い問題が隠れています。

では、なぜ年金受給者に向けた現金給付の話が持ち上がったのでしょうか。年金受給者の年代は人口が多く、選挙での投票率が8割近い。議員としては、母数も投票率も高い世代に寄り添った政策を打って、次の選挙を有利に進める材料にしたいと思うのは、ある意味当然ではないでしょうか。

このように制度の背景を簡単にでも理解していれば、政策やニュースに対して、自分なりの意見を持ちやすくなってくると思います。

――ウクライナ危機や保育園無償化など、特定のテーマついて自分の意見を持てるほど深く知りたい場合、いい学び方はありますか?

政治については、「ただひとつの正解」が存在することはめったにありません。人の数だけ、「意見」と「正義」があります。もしあるトピックについて深く知りたいのであれば、受験生向けの教材に加えて、複数の有識者の意見を聞いてみるのがいいのではないでしょうか。

政治の基礎を学ぶためにはインフルエンサーの動画配信を避けるべき、と前述しましたが、ここでは「正義は人の数だけある」と理解したうえで、彼らの意見に耳を傾けるのもいいでしょう。ほかにも、読書や動画の視聴、セミナーへの参加などを通して、自分の中に情報をたくさんストックすることで考える材料にできると思います。

――なかなか自分の意見を持てない時は、どうしたらいいですか?

考える作業は、知識と知識の組み合わせです。もし自分の意見が持てないなら、考えるために必要な知識の材料が足りてないのだと思います。

そういう時は、結論は先送りでいいから、まずは政治の学び直しやいろいろな人の意見に触れるところへ立ち返る。そうすれば、考えるための知識の材料が揃って、自然と自分の意見が出てくると思います。

(取材・執筆:ゆきどっぐ 編集:鬼頭佳代/ノオト)

取材先

馬屋原吉博さん

中学受験個別指導教室SS-1副代表。大手予備校や進学塾で中学・高校・大学受験の指導を経験し、現在は1対1の中学受験指導に専念する。「小学生でもわかる」解説がモットー。著書に「今さら聞けない!政治のキホンが2時間で全部頭に入る」「今さら聞けない! 世界史のキホンが2時間で全部頭に入る」(以上、すばる舎)、「中学受験 見るだけでわかる社会のツボ」(青春出版社)など。

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https://www.ss-1.net/

※本記事はWebメディア「クリスクぷらす」(2022年5月7日)に掲載されたものです。

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