記憶のメカニズム

古典的条件づけとは?CMや広告などにも応用される学習記憶

最終更新日:2024.02.11編集部
古典的条件づけとは?CMや広告などにも応用される学習記憶

古典的条件づけとは?刺激をくり返し与えることで条件反射するようになる学習記憶

古典的条件づけとは?

古典的条件づけ(Classical conditioning)とは、一定の条件の刺激をくり返し与えることで条件反射するようになる学習記憶をさします。生理的な反射を引き起こす刺激を何度も提示することで、深層心理や無意識に影響を及ぼして反応が変化する「条件づけ」という学習手法のひとつです。Aという刺激をBという刺激とセットでくり返し提示すると、刺激BだけでもAと同じ反応をすることが条件反射としてきざみ込まれる潜在的な記憶といえます。刺激に応答(respondent)することからレスポンデント条件づけとも呼ばれています。

古典的条件づけを提唱したのは、ロシアの生理学者イワン・パブロフです。イヌにえさを与える直前に毎回ベルの音を鳴らすことで次第にえさがなくてもベルの音を聞くだけで唾液を分泌するという、条件反射の研究観察がもとになった理論を発表しました。パブロフの研究はその後の研究の典型となったため、古典的条件づけと呼ばれるようになりました。

条件反射の研究観察である「古典的条件づけ」の手順は、以下の通りです。

  1. えさの時間になったらベルを鳴らしてイヌに音を聞かせる

  2. そのあとすぐにえさを与える

  3. 「1」と「2」の過程をくり返し行う

  4. ベルが鳴るとえさが与えられることを学習したイヌは、ベルの音を聞くだけで唾液を出すようになる

えさを見たときに唾液が出るのはどの動物にも見られる生理的な反応です。しかしパブロフはイヌがベルを鳴らす音からえさを連想して唾液を出すように訓練し、この結果得られた反応を条件反射と呼びました。

そもそもイヌがえさを見ると唾液を分泌する反応は、生体が本来もっている「無条件反射」です。その無条件反射を引き起こす刺激のことを「無条件刺激」と呼び、えさはこれにあたります。また訓練によって学習が成立する前の刺激のことは「中性刺激」と呼んでいます。この場合はえさとひもづけられる前のベルの音です。条件づけが形成されていないイヌにベルの音を聞かせても唾液は出ません。しかし、中性刺激(ベルの音)を与えた直後に無条件刺激(えさ)を与えることをくり返して学習記憶が形成されると、イヌはベルの音という中性刺激だけで無条件に反射を起こすようになり、古典的条件づけが成立するのです。

梅干しの写真と古典的条件づけ

梅干しの写真と古典的条件づけ

同じことを、梅干しで置き換えて考えてみるとイメージしやすいかもしれません。

  1. 無条件に反射を起こす「無条件刺激」である梅干しを口に入れる

  2. 生理的な反応から「無条件反射」としての唾液が出る

  3. 「梅干しはすっぱくて唾液が出るもの」という学習記憶が形成される

  4. 梅干しを食べることを何度もくり返す

  5. 「中性刺激」である梅干しの写真を見ただけで唾液が出るようになる

  6. 古典的条件づけが成立する

梅干しを食べたことがない人の場合は、梅干しの味と梅干しがひもづけられていないため、「中性刺激」である梅干しの写真を見ても唾液は出ないでしょう。

古典的条件づけが成立するのは、梅干しがすっぱいとわかっている場合です。たとえば梅干しを食べた経験をもたない外国の人の場合、梅干しの写真を見ただけで唾液が出ることはあまりないでしょう。梅干しを食べたときのすっぱさを「刺激A」、梅干しの写真を「刺激B」と考えると、刺激Bだけでも刺激Aがあるときと同じように反応するように条件づけられることが古典的条件づけなのです。パブロフはこの結果から、どのような行動も条件づけが形成できれば身につけることができると結論づけました。

記憶を強化したり消去できるのが古典的条件づけの特徴

ここで古典的条件づけと記憶の関係性を整理してみましょう。

長期記憶の分類

古典的条件づけは長期間保持される潜在的な記憶という位置づけですが、ほかの記憶と違って、強化したり消去できます。梅干しの例で説明してみましょう。

古典的条件づけの強化

条件反射が成立したあとに無条件刺激を与えることをくり返すと、刺激と反射の関係性がよりいっそう強くなります。

古典的条件づけの強化の例
梅干しの写真を見た直後に梅干しを食べることをくり返すと、条件反射が強化される。

古典的条件づけの消去

条件反射が成立したあとに、条件刺激のみを与えて、あえて無条件刺激を与えないことをくり返すと、条件反応が起こらなくなります。

古典的条件づけの消去の例
梅干しを見ると唾液が出る条件反射が成立したあと、梅干しを食べない期間が続くと、梅干しを見ても唾液が出なくなる。

また、古典的条件づけは情動にも影響すると考えられています。不快な刺激を提示されると嫌悪刺激と判断されてネガティブな感情の反応が成り立ってしまうこともあるので注意してください。特定の味覚を嫌悪する条件づけがされてしまい、好き嫌いや偏食の原因にもなってしまいます。

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まとめ

私たちの日常生活や1日の行動は、条件づけられることや学習することで成り立っている場面ばかりです。またCMや広告などにも古典的条件づけが織り込まれていて、そのため私たちは特定のアイコンやイメージ、音声を目や耳にしたときに特定の対象が脳裏に思い浮かんでしまうことが少なくありません。メッセージをくり返し送り続けることは地道なようでいて、実はとても大きな効果をもっています。

参考文献

  • 鹿取廣人 (編)・杉本敏夫 (編)・鳥居修晃 (編)・河内十郎 (編) (2020).『心理学第5版補訂版』東京大学出版

  • 渋谷昌三 (2021). 『決定版 面白いほどよくわかる!心理学の本』 西東社

  • デルタプラス編集部(2020).『教養としての心理学101』デルタプラス

  • 古典的条件づけ 『フリー百科事典 ウィキペディア(Wikipedia)』(最終閲覧日2022年10月30日)

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