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Netflix「今、私たちの学校は…」が面白い5つの理由──完璧な若手の演技、コロナウイルスや社会問題も想起。(Toru Mitani)

Netflixで配信中の「今、私たちの学校は…」は、韓国“K-ゾンビ”作品の最新系。一度観始めると止まらないその理由を、エディターが分析!

Netflixシリーズ『今、私たちの学校は...』独占配信中(以下同)。

今作の序盤、校庭の外で徘徊するゾンビを見て生徒が「『新感染』みたいだ」というセリフがある。やはり、韓国のゾンビブームの皮切りとなったのは『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2016)であることは間違いない。その後、ドラマ「キングダム」(2019〜2020)や「Sweet Home -俺と世界の絶望-」、映画『#生きている』(ともに2020)など、続々とヒットが誕生。その“K-ゾンビ”のパッションをしっかりバトンタッチしているのが、今作「今、私たちの学校は…」である。

その1 誰もがゆかりのある“学校”が舞台なので、感情移入しやすい。

たとえば図書室。Photo: ©Netflix / Courtesy Everett Collection

メインとなる舞台は男女共学のヒョサン高校。一人目の感染者が出るのもこの高校で、京畿道(キョンギド)のヒョサン市内へと感染の広がりを見せ、終焉に向けてすべての伏線、人々はヒョサン高校へ戻ってくる。まず思ったのが、今まで観たK-ゾンビ作品の中でいちばん感情移入できたということ。気持ちは学生時代に引き戻されるし、意気投合できない人たちとでも何かのきっかけで共同意識が持てたり、友情が芽生える“あの感覚”を思い出させてくれる。ゾンビウイルスが蔓延する隔離された校内で生き延び、サヴァイブする生徒たちと一緒に戦っている気分になれるはず。その感覚に浸り、たった2日で全話鑑賞。

その2 全員うまい!若手の確実な演技に引き込まれる。

確実にスターとなると予測される、演技派のパク・ジフ。

役者陣が、もう最高。数々の賞を受賞した映画『はちどり』(2020)で主演を務めたパク・ジフは、メインキャラクターのオンジョ役を演じており、曖昧で答えの出ない感情の表現方法が素晴らしく、ゾンビによって奪われていく大切な人々への尊い気持ちや情の深さがビシバシと伝わってくる。映画『君の誕生日』(2019)でも印象的だったユン・チャンヨンはオンジョの幼馴染役、チョンサン役で登場。彼の勇敢な姿、弱い者へは自らを犠牲にして立ち向かうスタンスが押し付けがましくない。この表現力は秀逸! と感動。

問題を起こしまくるグィナム役のユ・インスは、“内側に抱えた痛み”をラストに向けて放出!

ほかにも「イカゲーム」(2021)出演のイ・ユミをはじめとする、若手が目白押し。重要なポイントは十数人の若手全員が素晴らしい演技だということ。本気で本気で全員良い。それぞれの性格、個性が回を重ねるごとに広がりを見せる。そのため、全12話の濃度が異様に高くなっている。11話のチョンサンとグィナムのやりとりなんて、もう、涙無しで観られない。

その3 コロナウイルスのジレンマや、セウォル号沈没事故の問題を想起させる脚本の妙。

Photo: ©Netflix / Courtesy Everett Collection

『新感染 ファイナル・エクスプレス』のゾンビは即感染、即ダッシュ。「Sweet Home -俺と世界の絶望-」のゾンビは、生前の個性や意思が投影されたキャタクター系。作品によってゾンビの形態が変わってくるが、今作はいちばん現状にフィットしてたように思う。通常感染では“即ゾンビ化”だが、噛まれる人によって感染レベルが変わるのだ。ウイルスの抗体を持っていると、完全に感染せずに人間の個性も残る。また、物語が進むにつれ国家がウイルス対策を進めていき、感染地域を隔離し、感染者していない人間の感染有無を疑う描写も出てくる。この状況で眺めていると、さまざまなことがコロナウイルスを想起させ、ソンビへの恐怖と交差していく。そこが怖くもあり、この2年間で感じた痛みをも包み込む感覚がとても新しい。

そして、高校で孤立した生徒たちがある理由で国家から救われない、取り残されるという場面も多々。募ってく、大人や国への不信感を見ていると、どうしても2014年に起きたセウォル号の沈没事故を思い出してしまう。正しい救助が行われず、救われるべきだった304人(修学旅行中の高校生が大半)の命が犠牲となったこの事件。もちろん公式には今作がこれらを紐づけているとは発表していない。しかし、これらの社会問題、情勢を意識させ、もう2度と起きてはならないと思い出さてくれる点は素晴らしいと思う。また、減少することのない韓国におけるいじめ、性暴力の問題を考えさせるシーンも登場する。心はかなりかなり痛むが、“問題が存在する事実”を直視していかなければいけない。

その4 ゾンビパニックを緩和させる、ほっこリズム。

イ・スヒョク役のパク・ソロモンは今後人気が急増しそう。

今作のゾンビはCGをほとんど使用せず、リアルさを追求しているように見える。だから、とにかく怖い。ゾンビが登場するさじ加減が絶妙で、今までのゾンビ作品でいちばん叫んだと思う(放送室の“あの”シーンなんて、本当に「ぎゃー!」と言葉を発した)。個人的例えだと、「ウォーキング・デッド」シリーズで、キャロルの娘、ソフィアがゾンビ化して納屋から登場した時くらいに。そのくらいに緊張の連続だ。その中でホッと一息つかせてくれるのは、生徒たちが友情を育む姿や、無邪気なやりとり。そのバランス配合が素晴らしいのが、今作が飽きない理由のひとつだろう。特に、ムードメーカーでプラスサイズの男の子、デス(イム・ジェヒョク)がいい味を出している。彼のおとぼけやギャグで一瞬緊張が解け、死への恐怖から解放されるのだ。それはまるで、一緒にサヴァイブしているひとりの“チング(友達)”として。

その5 シーズン2を期待させる、エンディングと残された伏線。

学級委員、ナムラ役のチョ・イヒョンも素晴らしかった! 

全12話を観るとわかるが、エンディングを迎えた時に「え…これはまさか」と期待が高まる。ネタバレになるため詳しく語れないが、人間とゾンビの中間“ハンビ”がさらなる発展をするのかもしれないという予感が。男性俳優陣の兵役などもあるので、キャストのスケジュール調整が大変そうではあるが、ぜひともシーズン2として「今、私たちの学校は…」を再び楽しみたい。

──と、5つのポイントに絞って解説してみたが、ほかにも見どころはたくさんある。テンポ良く飽きることなく観られて、恐怖はもちろん、生徒たちの懸命に生き抜く姿にたくさんの涙を流すこと必至だ(僕は7回くらい泣いた)。新感覚の“Kゾンビ”最新系は、子供から大人まで楽しめるいい意味でメインストリームな良作だと断言! 2月4日の時点で、91カ国でトップ10内にランキングしている。

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