品質管理とは
品質管理とは、限られたコストで納期を厳守しつつ、顧客が求める品質を保つための取り組みのことで、Quality Controlを略し「QC」とも呼ばれています。
製造段階だけではなく、より品質を高めるための検証や改善なども含みます。
品質管理は安定した製品をつくるために、特に製造業ならば必須ともいえる取り組みでしょう。
品質管理の必要性
日本の製品には高い品質が求められています。そのため、日本でものづくりをするのであれば、製品の品質担保は最重要命題のなかの一つです。
場所や使用する加工機械、環境が変わっても、同一品質のものを製造することは、企業の競争力強化にもつながります。
品質管理には手間もコストもかかりますが、結果的に顧客満足度向上、業務効率化、無駄なコストカットにもつながります。
品質管理と品質保証の違い
品質管理と品質保証の違いは、大まかに説明すると売り手目線か買い手目線か、という点にあります。
品質管理は製造する製品に対し、売り手目線で管理していきます。一方、品質保証は、すでに完成した製品を買い手目線で考えていくことです。
それぞれどのような特徴があるのか、以下で詳しく解説します。
品質管理
品質管理とは、製品の品質に問題がないようにするための活動や取り組みのことです。
環境が変わっても、常に一定以上の品質を保ち、不良品を出さないようにします。
品質管理は材料の管理、作業工程の管理や見直し、完成した製品の検証、改善なども含み、製造工程全体を売り手側が見直していく点が特徴です。
品質保証
品質保証は、完成した製品が規定の品質を保っているかどうかを確認するための取り組みです。
基本的に買い手がどう思うか、満足するかという点を重視することが、品質管理との違いになります。
具体的には、顧客からの感想やクレーム対応などの調査やデータ確認を行い、分析結果をそれぞれの担当部門にフィードバックすることで、顧客が満足する品質を確保します。
品質管理の業務内容
品質管理の主な業務内容は、以下の3つです。
- 工程管理
- 品質検証
- 品質改善
それぞれの業務の内容や手法について解説します。
工程管理とは
工程管理とは、製造工程を管理し、製品が効率よく正常に生産されるようにするためのものです。ただ、工程管理は設備だけではなく、教育や研修など「人」の育成も含まれます。
工程管理のなかの具体的な業務内容として、作業手順の標準化、品質管理と作業訓練、設備の維持管理、工程を正常に保つ管理の4つがあげられます。
作業手順の標準化
作業手順の標準化とは、手順を全体で統一することにより、誰が作業にたずさわっても品質を保てるようにすることです。
手順をマニュアル化して全体で遵守することにより、時間や場所、人が変わっても品質のばらつきを防ぎ、一定の品質を維持することを目的としています。
品質教育と作業訓練
「人」に対する品質管理です。研修や、現場で作業を行いながらトレーニングするOJT(On the Job Training)により、品質を維持できる技術や知識をもつ人材を育てます。
そこで、標準化した作業手順の周知徹底をはかることも重要となります。
設備の維持管理
手順や人材がそろっていても、設備に問題が起これば安定した品質は保てません。そのため、日常的に設備を点検し、異常や不備を事前に防ぐようにしましょう。
日常的に修復や調整を行っておけば、常に最適な設備で製品を製造することができます。
工程を正常に保つ管理
工程にミスや不良による不適合が起きないように、工程を正常に保つ管理を行います。
まずは現状を見直すために、製造における特性や管理方法などをまとめたQC工程表を作成しましょう。全体を可視化することで、ミスの見落としや不適合の発生を未然に防ぐことができます。
品質検証とは
品質検証とは、完成した製品だけでなく、製品の原材料や部品などの材料や生産工程を検査することによって品質を保証する作業です。
品質検証には、主に「製品品質の検査」と「工程能力や管理状態の監視」の2つがあります。
製品品質の検査
製品品質の検査では、完成した製品を出荷する前に、顧客が満足する品質を満たしているかどうか検証します。
そのほかにも、自社ではなく取引先から購入した原材料や部品に問題がないか受け入れ時に検査することも必要です。
自社の生産工程が適切であっても、原材料や部品などに不備があれば完成する製品の品質は低下してしまうため、重要な工程と言えるでしょう。
また、不適合が発生しやすい工程や、完成後では確認のできない工程においては、製品が完成する途中の生産工程の中で品質を検査する必要があります。
工程能力や管理状態の監視
品質を保った製品を生産するための工程が適切であるかどうか監視します。
工程能力を数値化したCp(工程能力指数)を算出し、基準以上の能力があるのかどうか確認する方法もあります。数値化することにより、客観的に監視を行えます。
品質改善とは
品質改善とは、不良品や不具合などの問題が起きたとき、原因を突き止めて再発防止策を立てることです。
品質改善のためには、不適合の再発防止、未然防止を行うことが一般的です。
不適合の再発防止
不適合の再発防止のためには、品質管理における問題解決のためのプロセスあるQCストーリーを活用する企業が多いでしょう。
一般的には、テーマの選定、現状確認、目標設定、原因の分析、対策実施、効果測定、標準化といったストーリーに沿って問題点を明らかにし、解決していきます。
不適合の未然防止
不適合を未然に防止するためには、工程FMEAという手法を利用することが一般的です。
FMEAとはFailure Mode and Effect Analysisの略で、製品や製造プロセスのリスクをあらかじめ想定し、未然に取り除くことで品質を向上させる手法です。
品質管理の実施手法|①PDCA
品質管理の具体的な実施手法の一つとしてPDCAがあります。
- Plan=計画
- Do=実行
- Check=評価
- Action=改善
計画を実行したのちに評価を行い、それをもとに改善する、といったことを繰り返すことで、品質改善に継続的に取り組めるようになります。
それぞれの段階で何をすべきか具体的な手法について解説します。
Plan=計画
まずは、課題解決や品質維持のための目標を設定し、それを解決できる計画を立てます。
このとき、具体的な数値として計画を設定することが重要です。数値として最終目標を決定すると、のちに評価しやすくなります。
Do=実行
計画を立てたら実際に実行します。計画を実行する際には、あとから分析や評価をしやすいように、タスクを細分化することがポイントです。
細分化したタスクがどのような結果になったのか、すべて記録しておきましょう。
Check=評価
実際に実行した結果を評価します。目標設定をどの程度達成できたのか、問題や課題は生じたかどうか細かく評価してみましょう。
目標が達成できたとしてもそれで満足するのではなく、どのようなところがよかったのか、新たな課題は生まれたのか確認します。
Action=改善
評価や見つかった課題とともに、どうすれば目標達成できるのか、課題を解決できるのか、改善方法を探ります。
新たにどのような行動を付け足すべきか、やめたほうがよい行動は何か、継続すべき行動は何か、といった観点にわけて考えてみましょう。
品質管理の実施手法|②インダストリアルエンジニアリング(IE)
IEとは、Industrial Engineering(インダストリアルエンジニアリング)の略で、作業のなかにある「ムリ・ムダ・ムラ」をなくすための手法です。
IEを行うためには、大きく分けて以下2つの手法があります。
- 方法研究
- 作業測定
それぞれ、どのような手法なのか詳しく解説します。
方法研究とは
方法研究では、工程分析、動作分析、運搬分析の3つの分析を行います。
工程分析
工程分析では、材料から製品になるまでの工程を図表により見える化して分析を行います。そのときの流れはものだけではなく、人や作業も対象です。
作業の分類は、加工・運搬・検査・滞留の4つにわけます。
担当者、製品の状態、作業内容について、類似したものや工程ごとに区切って分析すると流れをよく把握でき、管理しやすくなります。
動作分析
動作分析とは、作業する人の動作について分析することです。作業の導線や動作、姿勢などが効率よくできているか分析し、改善していくことで生産性向上を目指します。
具体的には、作業や工程をさらに細分化して、最適かどうか分析を行います。姿勢や動作のどこにムダがあるのか、どうすればムダを省けるのか分析を行うことが一般的です。
運搬分析
運搬分析はマテリアルハンドリングを意味し、マテハン分析とも呼ばれています。
直接利益には関わらない、材料や部品、製品の運搬ロスを最小限にするための分析です。
直接利益とは関係ありませんが、運搬ロスが多ければコストがかさみ利益は減少します。
片道の運搬で何も運ばない空運送が起きないようにするなど、運搬におけるムダの解消を目的に分析を行います。
作業測定とは
作業測定で行うことは、時間分析、稼働分析の2つです。それぞれどのような分析か解説します。
時間分析
作業や動作の時間を測定し、ムダがあるかどうか分析します。
主な手法はストップウォッチ法とPTS法です。
ストップウォッチ法は、実際に行われている作業時間をストップウォッチで測定し、標準時間を求める分析方法です。
PTS法は作業を動作ごとに分析し、あらかじめ設定された標準時間と組み合わせて作業時間を見積もる方法です。
稼働分析
稼働分析は期間を定め、そのなかで人もしくは機械がどのような割合で作業を行っているのか分析する手法です。
例えば、待ち時間や手持ち無沙汰になるような時間が多く、非稼働時間の割合が多い場合、その原因を調査し改善する必要があるでしょう。
ムダな時間がどのくらの割合であるのか把握することにより、実生産時間を増やす目的で行います。
品質管理の実施手法|③QC7つ道具
QC7つ道具とは、品質管理のデータ分析をする上で活用される代表的な7つの手法の総称です。
- グラフ
- パレート図
- ヒストグラム
- 散布図
- 特性要因図
- 管理図
- チェックシート
大量のデータを分析し、改善活動につなげる上で効果的であるため、品質管理・改善手法とし て活用されています。
それぞれ、どのように活用できるのか解説します。
グラフ
グラフは、数値の変化や比較を可視化するために使用します。
数値の羅列だけだと、変化や相関関係などを見つけにくいですが、グラフを活用すれば視覚的に全体像を把握可能です。
グラフには、円グラフ、棒グラフ、折れ線グラフ、帯グラフなどがあります。割合や推移など知りたいものに応じて、適切なグラフを選びましょう。
パレート図
パレート図は、値が降順になった縦棒チャートとその累積表示を表す折れ線チャートで表現されるチャートです。
数値の大部分(8割)は全体を構成するなかの一部(2割)が生み出しているという、パレートの法則に基づいて分析するときに使用します。
品質管理の現場では、不具合内容別の不具合件数や、不良個数などでよく使われ、重要な原因を一目で分析することができます。
ヒストグラム
ヒストグラムは「度数分布図」ともいわれ、データの分布を量的に可視化したグラフのことです。
横軸に階級、縦軸にデータの数値や度数をとってグラフ化することで、どのように分散しているのか、中央値はどこか等、データのばらつきを把握することができます。
品質管理では、製造工程の状態や問題点を明確にしたいときに使われます。
散布図
散布図は2つのデータに関連性があるのかどうかを分析したいときに使用するものです。
原因と結果、2つのデータをそれぞれ縦と横で表し、該当する部分に点を打ってグラフ化します。
散布図で分析することにより、原因と結果に関係があるのかどうか視覚的に把握することが可能です。
例えば、温度と不適合の発見件数に関係があるのかどうか調べたいときなどに使われます。
特性要因図
特性要因図は、課題や問題に対し何が要因なのか探るために使用します。
魚の骨のように矢印が集合しているため、「魚の骨図」と呼ばれることがあります。
問題そのものがもつ特性と、その問題に影響を与えていると考えられる要因の特性を整理するときに役立つでしょう。
管理図
管理図は、工程における偶然原因によるバラツキと異常原因によるバラツキを判断して、工程を管理するためチャートです。
時系列で取得したデータを折れ線グラフに、1本の中心線(CL)とその上下に合理的に決められた管理限界線(UCL、LCL))からなる管理線を配置することで、正常値なのか異常値なのかを視覚的に判断したい場合に有効です。
例えば、中央線から離れたところに異常値が生じている部分、値にばらつきがあれば偶然に起きた異常だと判断できますが、連続する、増加するなどの傾向があれば何かしらの原因があると考えることができます。
チェックシート
あらかじめ項目や表、グラフなどの雛形を用意しておき、データを記入するためのシートです。
日々の点検目的のほか、調査のためにも使用されます。
事前に必要項目を記載しておくことにより、確認漏れやデータの収集忘れを予防できます。
チェックシートに盛り込む項目は、常にアップデートを続け、企業にあったものを作るようにしましょう。
品質管理で押さえるべき4つの「M」とは
品質管理では以下の4つの「M」を管理することが重要です。
- 人(Man)
- 設備(Machine)
- 方法(Method)
- 材料(Material)
リスクマネジメントで利用される4つのMでは方法(Method)が、管理(Management)になることがありますが、ここでは、品質管理における4つの「M」について解説します。
Man=人
ここでいう人とは、製造の現場で作業する人を管理することを指します。
効率よく作業するためには、適切な人材配置を行い、なおかつ効率化された作業方法を確立することが必要です。
それぞれの業務で必要なスキルと、作業員のスキルを一覧にしたスキルマップを作成し、最適な人員配置を目指しましょう。
Machine=設備
製品をつくるための機械や、設備に不具合が起こると、品質は安定しません。
故障やエラーが起きてから対処すると不良品が発生してしまうため、予防や早期発見が重要です。
点検やメンテナンスを行う頻度を定め、不具合を未然に防ぐようにしましょう。
設備が正常であれば、品質や工程能力維持、安定した稼働率につながります。
Method=方法
品質管理におけるMethodは、作業方法のことを指します。
安定した品質で製品をつくるためには、効率がよい作業方法を確立し、それを遵守することが大切です。
マニュアルや作業標準書、作業指示書で方法を決定し、正しい手順や方法で材料を調達し、製造工程を進めていきましょう。
そうすることにより、人や環境が変わっても品質は安定します。
Material=材料
材料に不具合があれば、適切な人員配置、設備、方法で製造しても不良品になってしまいます。
仕入れる材料や部品が一定の規格を満たしているのかどうか、検査・検品を適切に行いましょう。
また、仕入先や調達手段、運搬方法にもムダがないように考慮します。
一度決めた取引先に常にお願いするのではなく、適時見直すことでよりムダ削減につながる場合もあります。
品質管理にはデータ活用が不可欠
品質管理を適切に行い、品質を向上させるためには、製造現場におけるデータの収集と分析が欠かせません。
正しく効果のある分析を行うためには、作業員の経験や勘ではなく、実際のデータを客観的に分析することが重要です。
そうすることで、属人的な作業を均一化し、効果的な品質管理を行うことができるでしょう。
データ分析の必要性は理解したものの何からはじめたらいいかわからない…という方には、ウイングアーク1stが提供する、品質管理のためのデータを分析・可視化できるソリューションがおすすめです。
ダッシュボードを活用してデータを可視化することで、以下のようなメリットを得られます。
- 品質のばらつき・不良発生の検知と要因分析が可能に
- 品質不良を未然に防止
- 品質改善により不良品の対応や手直しにかかるコストを削減できる
- 一元管理が可能になりトレーサビリティを確保できる
まとめ
製造業において、品質管理は必須ともいえるものです。
生産性を向上し、ムダなコストを削減するために、作業内容、作業員、作業方法を見直し、品質の向上や安定に努めましょう。
品質管理を正しく行うためには、客観的なデータを分析することが重要です。
ご紹介したように、ウイングアーク1stでは、品質管理のためのデータを可視化できるソリューションを提供していますので、ぜひお気軽にご相談ください。