皆さんは「体軸」と聞いて何をイメージするだろうか? 体幹と違うの? という方もいるかも知れない。

体軸とは、体を上下に貫く軸状の意識のことで、「センター」「正中線」などと呼ばれることもある。体軸は一般的には頭のてっぺんとお尻の穴の少し前(会陰)とくるぶしの直下を通るラインのことを指す(図1)。一方の体幹は、大きく捉えるとお腹・背中・胸・お尻・骨盤まわりなど胴体となる部位の総称のことをいう。

体軸とは?

前述したように体軸は体幹と違い、上下を貫く軸の“意識”なので、身体の内部にその線は存在しておらず、目に見えるものではない。あくまでも体軸は身体感覚(体性感覚的意識)なのだ。ただし、体軸を自分自身の身体感覚として感じられるかどうかに個人差があり、中にはあまり感じられない人もいる。また、この意識は体幹をも貫いているため、体幹を鍛えても体軸は形成されないが、体軸をつくれば体幹は鍛えられる(使えるようになる)。

体軸がある・なしの違いを比べてみると以下の表のようになる。まず体軸が整うと体のズレが少なくなり、運動能力が向上しやすい。そして体軸を整えるために呼吸と関係のある筋肉を使うため、深い呼吸がしやすくなる。深くなった呼吸で脳が酸素を沢山取り込めるようになるため、脳が働きやすくなり集中力もアップする。このように体軸を整えることで運動だけに限らず、勉強やお稽古事など、何をするにも土台となる能力が身につくというわけ。

体軸とは?

では具体的に体軸を形成するにはどのようにしたらいいのだろうか? そのためには、「体軸筋」と呼ばれる体軸を形成するための筋肉、または体軸が通ると効率的に働く筋肉のバランスを整えることが必要である(図2)。

体軸とは?

体軸筋は主に、全身のインナーマッスルに多く含まれている。体軸筋を含むインナーマッスルは体の深部にある小さな筋肉の集まりで、体を内側から支え体の保持や動きの安定性を高めてくれる。

体軸筋の中でも体幹のインナーマッスルは、背骨の安定や呼吸にも関わるため、とても重要な働きをする。そしてこれらの体軸筋は単独で動くのではなく、筋肉同士が繋がること(筋連結という)で機能する。よって体軸筋の動きが活発になると、動作時に全身の筋活動がスムーズに行われるようになる。

体軸筋を機能させるために用いる方法として、クロスポイントという複数の筋肉の交差点を刺激しながら行う“体軸体操‘’がある。クロスポイントは全身に14箇所あり、ポイントの刺激をすることでその周囲の筋肉が促通され、体軸筋が活性化しやすくなる。体操の方法は、クロスポイントをさすったり、触りながら行うのでストレッチとは少し違い、どちらかといえば筋肉に刺激を与えるものだ。

14箇所あるクロスポイントのうちの一つ、鼠径部を刺激して体感してみよう。

① 両足を腰幅に開き左右に捻る。左右どちらに捻じりにくいかチェックする。

体軸とは?

② 捻じりにくい方と反対の鼠径部を指先で抑えながら捻る。(左に捻じりにくい場合は右の鼠径部を抑えながらもう一度左に捻る)

体軸とは?

いかがだっただろうか? 鼠径部を抑えただけで捻じりやすくなったのではないだろうか? 体軸体操ではこのクロスポイントを触りながら行うため、身体感覚が研ぎ澄まされ、体を正確かつ効率的に動かすことができ、体軸を形成しやすい状態にしていくことが可能である。今回は17個ある体軸体操の中から、鼠径部のポイントを刺激したアクションを紹介する。

〈マウンテンロケット〉
鼠径部にあるクロスポイントを刺激する方法

① 両足を肩幅に広げ、つま先を斜めに広げる。両脚の付け根を触り、まっすぐに下にしゃがむ。両手は体の前で山を作る

体軸とは?

② お尻を左右、前後に3回動かす。上下に10回ほどバウンドさせる。

体軸とは?

③ 上下のバウンドの勢いを使ってまっすぐ上に伸びる。両手を下ろし、軽く膝の力を抜く。この動きを3回ほど繰り返す。

体軸とは?

体軸体操は機能解剖学・構造運動学に基づいていながら、とても簡単な体操なので、どなたでも正しい動きを再現しやすいのが特徴だ。体軸体操を続けることで体軸が形成され『正しい体の使い方』が身につく。どんなトレーニングに取り組む時でも、体軸が整っていると運動の質が向上し、よりトレーニングの効果が感じやすくなるはず。体軸体操には即効性があるため、ぜひ日々のトレーニングの前に取り入れ、体軸の形成された状態での様々な変化を感じてみてほしい。

出典 株式会社やまちゃん(https://ymcn.co.jp/

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          さおり
          ヨガ・ピラティスインストラクター/保育士

          沖ヨガ、ピラティスをベースに《キツくないのに、身体が変わって楽しい!》をモットーにレッスンをしている。マタニティーから、キッズ、最高年齢78歳の方まで幅広い年齢層の方々と大好きなヨガ、ピラティスを楽しんでいる。

          インスタグラム:@yoga_pila_sao