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週30時間未満でも社会保険の加入が必要?計算方法や企業に求められる対応

2024/04/01更新

この記事の監修下川 めぐみ

社会保険の適用範囲拡大の法改正により、パート・アルバイトの短時間労働者でも社会保険への加入が緩和されました。今までは適用事業所ではなくても、法改正により2024年10月には特定適用事業所と認められ、新たな対応が迫られる企業は多いと予測されます。対象の企業となることが考えられる場合、今後どのような対応が求められるのか、会社側の対応や手続きについて解説します。

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社会保険の範囲拡大による要件の変更点

日本の社会保険制度は、その時代の労働者のさまざまなニーズに応えるべく、制度を見直し充実を図ってきました。2022年10月にすでに大きな変更があり、2024年10月には社会保険加入の適用範囲がさらに拡大されます。ここでは、社会保険の適用範囲がどのように変化するのか確認しておきましょう。

特定適用事業所の要件が101人以上まで引き下げ

もともとパート・アルバイトの短時間労働者が社会保険への加入が義務付けられるのは、従業員数501人以上の企業でした。しかし、2022年10月からの法改正では、従業員数101人以上の企業が対象になるなど、社会保険の加入義務条件の要件が引き下げられました。さらに2024年10月には、適用範囲が従業員数51人以上の企業が対象になります。このように、パート・アルバイトの社会保険の加入条件が段階的に拡大するため、企業側はしかるべき準備を進める必要があります。

ここでいう従業員数とは、フルタイムで働く労働者に加えて、週労働時間がフルタイムの3/4以上のパート・アルバイトを含めた従業員数のことです。つまり、社会保険制度の適用要件を判断する従業員数とは、企業が雇用する全従業員数ではなく、現在の厚生年金保険の被保険者数です。そして、1年のうち6か月以上の期間、厚生年金保険の被保険者数が101人(2024年10月以降は51人)以上の企業を「特定適用事業所」といいます。
参考:日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大のご案内新規タブで開く

週30時間以下の労働者も加入が必要になる可能性がある

例えば、週休2日制で1日の所定労働時間がフルタイムで8時間の場合、週の労働時間は40時間になります。その3/4以上となると、週に30時間以上が目安です。この場合は、従業員数に関係なく社会保険の加入義務があります。しかし、週の所定労働時間が30時間未満でも、以下の条件に当てはまる場合は、短時間勤務のパート・アルバイトも社会保険に加入しなければなりません。

まずは、週の所定労働時間が20時間以上であることが条件です。この場合、残業などを含まず、雇用契約時の所定労働時間でみます。次に、月額の賃金が8万8000円以上であることです。さらに、雇用期間の見込みが2か月を超えることです。これらすべてを満たす従業員が社会保険加入の対象となります。ただし、昼間学生は対象にはなりません。

以前は、雇用期間が1年以上見込まれる従業員が社会保険の加入要件でしたが、改正後は2か月以上に変更されている点にも注意が必要です。特定適用事業所の適用範囲が拡大したこともあり、週20~30時間働くアルバイト・パートは社会保険の加入が必要となる可能性があるため心づもりをしておきましょう。つまり社会保険の加入要件をまとめると以下のようになります。

  • 週に20時間以上労働する契約のパート・アルバイト
  • 残業や通勤・家族・皆勤などの手当を含めない月額賃金が8万8000円以上
  • 雇用期間が2か月以上
  • 昼間学生でないこと

参考:日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大のご案内新規タブで開く

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【週30時間以下のパート・アルバイト】社会保険料の計算方法

以下で、社会保険加入要件を満たす短時間労働のパート・アルバイトの社会保険料の計算方法を確認してみましょう。

社会保険料の計算に使う標準報酬月額とは

厚生年金保険料や健康保険料の金額を算出する際に基準となるのが標準報酬月額です。最初は、入社時に取り決めた月額賃金を標準報酬月額とします。以降は、毎年4~6月の3か月間の賃金の平均額をきりのよい数字にした額が標準報酬月額となります。

全国健康保険協会(協会けんぽ)が毎年都道府県ごとに設定する保険料額表の標準報酬月額に基づき、1年間の健康保険料と厚生年金保険料が決まります。標準報酬月額は、健康保険料が1~50、厚生年金保険料が1~32の等級に細かく分けられています。なお、標準報酬月額には、基本給のほか、残業手当、通勤手当、家族手当、役職手当などが含まれます。ただし、年3回以下の賞与や出張費、臨時報酬、退職手当など不定期に発生する収入は含みません。
参考:日本年金機構「厚生年金保険の保険料新規タブで開く

厚生年金保険料の計算方法

厚生年金保険料は、標準報酬月額×18.3%で計算できます。例えば、標準報酬月額が8万8000円の場合、88,000円×18.3%=16,104円です。会社と労働者で折半して負担するので16,104円÷2とし、半額である8,052円を従業員から預かり、同額を会社が負担して日本年金機構(年金事務所)に納めることになります。

2017年9月以降、厚生年金保険料率は18.3%で固定されていますが(2023年9月現在)、念のため計算前に最新の保険料率新規タブで開くを確認しましょう。
参考:厚生労働省「厚生年金保険料率の引上げが終了します新規タブで開く

健康保険料の計算方法

健康保険料も、標準報酬月額×健康保険料率で計算できます。健康保険料率は、協会けんぽの場合都道府県ごとに、健康保険組合の場合は組合の規約ごとに異なります。毎年各都道府県の医療費などの事情を考慮し、保険料率の引き上げや引き下げの見直しが行われています。

例えば、標準報酬月額が8万8000円の場合、仮に埼玉県だと保険料率が9.78%なので、88,000円×9.78%=8,606.4円です(令和6年3月分)。健康保険料は、従業員と会社で折半します。

8,606.4円÷2=4,303.2円が半額となりますが、この場合1円以下の端数は四捨五入します。つまり、4,303円を従業員から預かり、同額を会社が負担して納めることになります。
参考:全国健康保険協会「令和6年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表新規タブで開く

なお、協会けんぽのサイトには、都道府県別の健康保険料額新規タブで開くが示されています。

介護保険料の計算方法

40歳から64歳までの従業員は、介護保険の被保険者となります。介護保険料は、標準報酬月額×介護保険料率で計算できます。

介護保険の料率は、1年ごとの収支がつりあうよう毎年度見直されます。協会けんぽでは、2024年3月から全国一律1.60%となっていますが、毎年度料率を確認して、40歳になった従業員を見落とさないように処理しなければなりません。

例えば、標準報酬月額が8万8000円の場合、88,000円×1.60%=1,408円が介護保険料となります。1,408円÷2=704円で、従業員から704円を預かり、同額を会社が負担して納めます。
参考:全国健康保険協会「協会けんぽの介護保険料率について新規タブで開く

雇用保険料の計算方法

広い意味での社会保険の中には、労働保険も含まれます。労働保険のうち、労災保険料は事業者が全額負担することになっています。従業員と会社が折半するのは雇用保険です。雇用保険は、1週間の所定労働時間が20時間以上、31日以上の継続雇用が見込まれる学生以外の従業員が加入対象となります。

雇用保険は標準報酬月額ではなく、月の賃金(給与や賞与)に雇用保険料率を乗じて算出します。雇用保険料率は事業の種類によって異なり、一般、農林水産・清酒製造、建設に分類されます。労働者と事業者の負担の割合も事業の種類により異なることに注意が必要です。
参考:厚生労働省「令和6年度の雇用保険料率について新規タブで開く

週30時間未満の従業員の社会保険料計算シミュレーション

短時間労働者が社会保険の加入要件を満たす場合、新たに発生する会社負担分はどれくらいになるのか解説します。以下の条件で社会保険料がどれくらいになるかシミュレーションしてみましょう。

勤務地・在住:東京
所定労働時間:1日5.5h(うち30分休憩)、週5日
月収:12万円(時給1200円(2023年7月度全国平均を参照)から大まかに算出)
標準報酬月額:118,000円(等級8)
健康保険料率:9.98%(東京)
会社負担分健康保険料:118,000円×9.98%÷2=5,888円
厚生年金保険料率:18.3%(等級5)
会社負担分厚生年金保険料:118,000円×18.3%÷2=10,797円

つまり、月収12万円の労働者に対して、健康保険と厚生年金保険の合計で会社負担分が16,685円となります。40歳以上の場合は、さらに介護保険料が上乗せされます。

参考:全国健康保険協会「協会けんぽの特定保険料率及び基本保険料率(保険料率の内訳表示)について新規タブで開く
参考:全国健康保険協会「令和6年度の協会けんぽの保険料率は3月分(4月納付分)から改定されます新規タブで開く

週30時間未満の従業員を雇う事業所に求められる対応

社会保険の適用範囲拡大の法改正により、対象の企業となることが考えられる場合、今後どのような対応が求められるのか、会社側の対応や手続きについて解説します。

従業員の中に社会保険加入の対象者がいるかを確認する

社会保険加入の対象者を確認するには、まず従業員の勤務時間や賃金額を個別にチェックする必要があります。短時間労働者の中にも、一定の条件を満たす従業員がいれば、社会保険の加入手続きを進めなければなりません。また、毎月発生する経費として費用を確保しておく必要があります。

そのため、まず社会保険加入の基準を満たす対象の従業員を把握することが重要です。次に、社会保険加入者が増えることで、会社の負担額がどれほど増えるのかを試算します。負担額を計算したうえで、対応方針を検討します。

要件を満たすなら特定適用事業所該当届を提出する

直近1年のうちに厚生年金保険の被保険者数が6か月以上に101人以上(2024年10月からは51人以上)の場合、特定適用事業所に該当します。直近11か月のうち101人以上の月が5か月ある場合、日本年金機構から「特定適用事業所に該当する可能性がある」旨の通知が事前に届きます。要件を満たす場合は、特定適用事業所該当届を該当した事実の発生から5日以内に日本年金機構の事務センターに郵送、または管轄の年金事務所の窓口まで持参しましょう。
参考:日本年金機構「特定適用事業所該当・不該当の手続き新規タブで開く

社内で社会保険加入の旨を周知して意思確認をする

今まで被扶養者としてパート・アルバイトで働いてきた従業員にとって、社会保険の加入は生活にかかわる大きな要件です。会社の対応としては、社会保険に加入するメリットとデメリットを伝え、加入に問題がないかどうかを意思確認する必要があります。扶養から外れたくないなどの理由で加入に消極的な従業員がいれば、当人の労働時間や日数を減らしたり、代替のシフトの穴埋めを検討したりといった対応が会社側に求められるでしょう。

社会保険の被保険者資格取得届を提出する

従業員から社会保険加入の意思が確認できたら、新たに社会保険に加入する従業員全員の被保険者資格取得届を作成し、提出する必要があります。健康保険加入にあたり、被扶養者の健康保険証が必要な場合は、被扶養者異動届の作成と提出も必要です。健康保険・厚生年金の資格取得届の届け先は日本年金機構の事務センターなどです。雇用保険の資格取得届の提出先であるハローワークとは異なるため注意してください。

社会保険の適用範囲拡大に伴う対応を円滑に進めよう

適用範囲の拡大により、週30時間未満の従業員も社会保険の加入対象になる可能性があります。条件を満たしている場合、会社が負担する社会保険料の計算や、対象となる従業員への加入の説明や手続きが必要です。従業員に加入について説明した結果、勤務時間を短くしたい、もしくはフルタイムで働きたいなどの意思を示すかもしれません。そのような状況に応じて、会社としても新たな対応が求められるでしょう。

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この記事の監修下川めぐみ(社会保険労務士)

社会保険労務士法人ベスト・パートナーズ所属社労士。
医療機関、年金事務所等での勤務の後、現職にて、社会保険労務士業務に従事。

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