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今年度版の厚生労働白書が、いくつかの調査結果を引きながら、人間関係の希薄化を指摘していた。
例えばNHK放送文化研究所が1973年から5年ごとに実施している「日本人の意識」調査。「親せき」や「職場」、「近隣」とのつきあい方は、「全面的つきあい」が望ましいという人が減り、「形式的つきあい」がよいと考える人が増えている。
そんな中で、孤立する人への支援や助け合いの仕組みをつくることの重要性を白書は訴えていた。
孤立に至らなくても、人とのつながりにくさを感じる人は多いだろう。
ここ数年の自分の生活実感に照らしても、人と親しくなるハードルは上がっているなと思う。コロナ禍で人と直接会うのを極端に減らしたあと、交流は完全には戻っていない。さらに、タイムパフォーマンス(時間対効果)という言葉を耳にするようになってからは、他人に時間を使わせることに以前より慎重になり、人を雑談やお茶に誘うのをためらうことがある。
記者の 担当ページ には単身中高年の便りがたくさん届く。つながりを模索する話をいくつか紹介したい。
埼玉県の女性(63)は、<個人情報を保護する意識や他人への警戒感で、自己開示が難しい時代ですが、おっかなびっくりでも、自分の情報を小出しにしてみると、共通点が見つかることがあります>と書いていた。昨年、仕事で会った女性にピアノが趣味だと言ってみたら、お互い音楽が好きなことがわかり、親しくなったそうだ。
自分のことを話すのは勇気がいる。小出しで探り合うのは手堅い取り口だ。
今ある関係を守るという考え方もある。
茨城県の佐藤恵美子さん(68)は毎月、5人の友人にはがきを書いている。
<お付き合いはこれから狭まるばかりでしょう。関係をつなげるには花に水をやるようにお手入れが必要だと思います。相手がうるさく感じないよう、忘れたころに「定期便だよ、元気してますか」と>
これはそのうち、まねしたいと思った。<暑中見舞いや寒中見舞いから始めるのがおすすめ>とのこと。
孤独・孤立や友人関係などについて研究する早稲田大の石田光規教授(社会学)は、「人とのつながり方は、それぞれの人が自分なりに考えて作っていくようになってきました。あまり積極的ではない人には、厳しい状況かもしれません」と話す。
「頑張って交流しなくちゃ、友達にならなくちゃっていう感じになると疲れるし、『友達』という枠にこだわると、相手にすごく期待してしまう」
とすると、どんなことから始めたら……。
「ジムなど定期的に通うところがあって、ついでに、そこにいる人とぽつぽつ話す、ぐらいがやりやすいと思います。何より続けられることが大事です」
静岡県の女性(69)は<3年前に夫をみとった後は、孤独との闘いでした。新聞の地域版に勇気を出して詩歌を投稿し、選者の先生が名前を載せてくださったことがうれしくて続け、日々の活力になりました。今も俳句を投稿しています>と書いていた。これも、つながり方のひとつだろう。