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コロナ禍をきっかけに転職活動する社会人が増えている。総務省の労働力調査によると、2023年の転職希望者は初めて1000万人を超える勢いだ。働き方が変化する中で、将来にわたって通用するデジタル分野の技術を身につけ、転職を試みるケースが多いのが特徴となっている。(茶山瞭)
「デジタル化を通じた業務改善に関心があり転職したい。不安は大きいが、楽しみでもある」
出版社に勤める横浜市の男性(29)は2日、東京・秋葉原の転職イベントで、参加したIT企業を見て回った。
今の仕事に不満はないというが、「学び直し」の民間講座で約半年間、顧客情報の管理手法などについて学んだ。新たなスキルを生かしたいと思っている。
総務省の労働力調査では、23年4~6月の転職等希望者は平均979万人。1~3月には997万人に達し、1000万人に迫る高水準が続いている。7人に1人が転職を考えている計算だ。
実際に転職した人は年300万人前後で横ばいが続くが、希望者は全ての世代に広がる。年齢別では25~34歳が248万人と最も多く、35~44歳が232万人、45~54歳が223万人と管理職が多い世代も続いた。コロナ前の19年と比べ、いずれも35万人前後増えた。
リクルートが転職活動中の人を対象に行った調査では、コロナ禍が何らかの形で転職活動のきっかけになったとする回答は約6割にのぼった。テレワークやリモート会議が定着し、時間や場所に縛られない働き方が広がったことが背景の一つとみられる。藤井薫HR統括編集長は「子育てや介護のしやすさなどをより重視する人が増えた」と指摘する。
特にリモートで働きやすいIT業界への関心が高まっている。プログラミング講座を提供する人材会社ポテパン(東京)の宮崎大地社長は「飲食、営業、介護など様々な業種の人がITエンジニアへの転職を望んでいる」と話す。
企業の間では、デジタル技術で業務効率化や事業変革を目指す「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の導入の動きが活発だ。こうした中、人工知能(AI)やデータ解析に精通したデジタル人材は不足しており、優秀な人材は奪い合いになっている。
政府も転職希望者のスキルアップを後押ししている。岸田政権は労働市場が活性化すれば持続的な賃上げにもつながるとのスタンスで、経済産業省は7月から、人材会社で「学び直し」講座を割安な価格で受けられる制度を本格的に始めた。3年間で33万人の転職を支援したい考えだ。