[安心の設計 子どものための特別休暇]「孫休暇」で祖父母も育児

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 祖父母が孫の育児のために仕事を休める「孫休暇」の導入が、自治体や企業で広がっている。育児を手伝いやすくし、子育て世代の負担を軽減する狙いがある。祖父母世代にあたる上司や先輩が職場で孫休暇を取ることで、若手職員の休暇取得へ理解が深まることも期待される。(小池勇喜)

自治体に制度

「孫休暇」を活用した植木さん(左)。その後も積極的に育児を手伝っている(植木さん提供)
「孫休暇」を活用した植木さん(左)。その後も積極的に育児を手伝っている(植木さん提供)

 福島県郡山市職員の植木一雄さん(59)は2月、同居する孫の芽衣ちゃん(3)と瑠衣君(1)の世話をするため、孫休暇を取った。植木さんの次女で、2人の子どもの母親・麻衣さん(28)は当時、職場復帰に向けた準備を進めており、植木さんが「自分が2人を見ているから、やりたいことを済ませてきたら」と、孫の世話を買って出た。

 孫休暇は、市が同月に導入した特別休暇で、年次有給休暇(有休)とは別に計8日間取ることができる。植木さんが取得者「第一号」で、休暇当日は、7時間ほど2人の孫と過ごした。瑠衣君を抱っこしながら、芽衣ちゃんとパズルや積み木をして遊んだほか、おむつ交換をしたり、ミルクをあげたりと、初めて一人で孫と向き合った。

 植木さんは「孫がケガをしないように見守り、気が抜けなかった。早く娘が帰ってきてほしいと思った」と話し、子育ての大変さを実感したという。麻衣さんは「とても助かった。今後も機会があれば、子どもを祖父母に預け、気分転換する時間を作りたい」と語った。

 宮城県でも、1月から孫休暇を導入した。共働き世帯が増加する中、祖父母も育児に関わり、子育て世代を支えていくことが主な狙いだ。県職員の定年が2031年度までに、段階的に65歳へ引き上げられることから、孫を持つ職員が増えることも視野に入れた新制度だ。

 早速、孫休暇を利用した阿部進さん(59)は、「父親も祖父母の世代も、育児のために休みを取りやすい職場づくりにつながればいいなと思う」と語る。

民間でも導入

 民間企業でも、祖父母の育児参加を促す休暇制度が広がっている。

 大手食品メーカー「江崎グリコ」(大阪市)では19年3月に、孫のいる社員が取得できる休暇を導入した。育児支援のほか、入園式や運動会の行事参加など、幅広く利用できる。精米機器メーカーの「サタケ」(広島県東広島市)には、社員に孫が生まれたら、10日以内に3日連続で取得できる「イクじい・イクばあ休暇」がある。

 もともと祖父母から子育て支援を受ける親は少なくない。国立社会保障・人口問題研究所の出生動向基本調査によると、第1子が3歳になるまでに、母親の手助けを受けたという夫婦の割合は、約6割に上った。孫休暇は、こうした子育てのニーズにあった制度と言えそうだ。

 高知市のフクヤ建設は、有休の一部を「GG・BB休暇」と名付け、孫のための取得を奨励している。目的は育児支援と、有休を取得しにくい社内の雰囲気を変えることだ。GGは「じぃじ」(祖父)、BBは「ばぁば」(祖母)を表す。

 孫のサッカー教室の送迎で休暇を取る例もあるといい、22年度の平均有休取得率は、前年度に比べ4割も伸びた。「育児休業が取りやすい雰囲気になった」と話し、気後れせずに育休を取得できたというパパ社員もいる。

 GG・BB休暇により、男性社員が積極的に休暇を取るようになっただけでなく、子育て中の女性社員が、気兼ねなく1時間単位で休みを取ったり、状況に応じて在宅勤務に切り替えたりするようになったという。同社の人事担当者は「仕事と子育ての両立への理解が社員の間で深まっているようだ」と話している。

世話の今と昔 冊子で紹介

自治体が作成した孫育てに関する冊子
自治体が作成した孫育てに関する冊子

 「孫育て」に役立つ情報を、ガイドブックなどの冊子としてまとめ、祖父母を支援している自治体もある。

 鳥取県の「祖父母手帳」には、おむつの素材や離乳食の食べさせ方など、今と昔との違いが書いてある。年齢ごとに、子どもの体や生活リズムの特徴もまとめた。市町村を通じ、母子健康手帳を交付する際に一緒に渡している。

 新潟県阿賀野市では、「あがの孫育て手帳」を作成している。孫と一緒に遊べるスポットや子育て支援センターを紹介するほか、病気やケガの対処方法をイラスト付きで示している。

 孫育てのポイントについて、NPO法人「孫育て・ニッポン」の棒田明子理事長は、「祖父母はサポーター役として、パパやママの考えを聞きながら育児に協力してほしい」と話す。ただ、祖父母が健康でいることが大切で、自分たちの体調が優れない時には、頼まれ事を断ることも重要だと指摘する。

 一方、子どもの世話を祖父母に頼む親に対して、「手伝ってくれることを当たり前だと思わず、『ありがとう』という気遣いを忘れないでほしい」と、棒田さんは呼びかけている。

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