自宅療養生活では「風呂入らず」「トイレは家族寝た後」…ホテルに移り「比較的自由に動けた」

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 新型コロナウイルスの感染リスクは誰もが抱えている。感染者の大半は症状も軽く、自宅やホテルで隔離療養することになるが、療養生活は、どんなものなのだろう。軽症者として自宅とホテル双方で療養生活を体験した大阪府八尾市の男性(40)が読売新聞の取材に応じた。(中瀬有紀)

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スマホで体温報告

 新型コロナで陽性が判明すると、まず保健所から入院が必要かの判断が示される。不要な場合、ホテルや自宅での療養を求められ、厚生労働省によると、3日時点の療養者数は約2万2000人で入院患者約1万3000人を大きく上回る。

 療養期間は最短10日間で、症状がなくなっていれば終了となる。基本はホテルなどでの宿泊療養だが、介護や子育てなどの事情があれば自宅療養も認められる。現在の宿泊療養者と自宅療養者の割合は1対3だ。

 八尾市の男性は、妻と7歳と3歳の子供の4人暮らし。昨年12月18日に陽性が判明し、妻や子供も感染していたら宿泊療養では面倒を見られなくなると考え、最初は自宅で療養した。

 自宅療養について、国は「部屋を分ける」「全員がマスクを着用」など八つの注意点を挙げている。

 男性は自宅では2階の一室に籠もり、会話には携帯電話を使用。トイレは皆が寝静まった夜に使った。風呂は入らず、ウェットティッシュで体を拭いていた。

 体調は毎日、スマートフォンで保健所に報告。熱が38・8度まで上がったほかは、腹痛や鼻水程度だった。処方された薬は風邪薬、解熱剤、胃薬の3種類で、「治療薬がない」という事実を実感したという。

 感染後に初めて知ったのは、家族が濃厚接触者の場合、陰性でも2週間の自宅待機が必要なこと。全員が外出できず、食料品の買い出しに困った。

 当時、八尾市はまだ自宅療養者への弁当の宅配がなく、妻のママ友らが食材を届けてくれたが、男性は「自治体のサービスがあるか、知人が頼れるかを考え、必要なら備蓄を」と話す。

部屋で筋トレ

 陽性判明から5日目、家族3人が陰性とわかり、大阪市内のビジネスホテルでの宿泊療養に移行した。

 宿泊療養では、保健所から事前連絡で、パジャマ、タオル、ドライヤーなどの生活用品に加え、コーヒーや菓子類などの嗜好しこう品、パソコンなど気分転換に必要なものを持参するよう求められる。

 男性も準備し、ホテルまでは迎えの車で移動した。

 普段の利用時と違ったのは、日々の部屋の掃除やシーツなどの交換がないことで、男性はタオルを大小1組しか持って行かず、少し不便だったという。

 食事は弁当で、自動販売機はなく、飲み物は500ミリ・リットルのペットボトルの水が1日3本提供された。洗濯は自身でする必要があり、洗濯機は無料だった。

 滞在中は、毎朝、体温と酸素濃度を測ってネット上で報告。1日2回、看護師から内線で電話があった。

 ホテル内は比較的自由に動けたが、部屋にとどまり、家族とテレビ電話をしたり、筋トレをしたりしていた。

 療養は10日間で終了。ホテル滞在は6日間で、宿泊料や食費は不要で、必要だったのは帰りの電車賃だけだった。

 双方での療養を振り返り、男性は「どちらが良いかは人にもよるが、家族感染の心配がなく、看護師が常駐しているのは宿泊のメリットだと思う」と語った。

トイレは毎回消毒を

 男性の体験を基に、公衆衛生の専門家にアドバイスを聞いた。

 男性はトイレや風呂に気を使ったが、新潟大の斎藤玲子教授は「トイレは感染リスクが高い」と強調。便にウイルスが混じるため、水を流す時は蓋を閉め、使用するたびにトイレクリーナーで便座やドアノブを拭くことを推奨する。

 風呂はウイルスがお湯で流れるため、それほどリスクは高くないが、「不安なら、感染者が最後に入ったり、シャワーだけにしたりする工夫を」と助言する。

 国際医療福祉大の和田耕治教授は、家族感染に神経を使い、精神的に疲れたり、容体急変に気付くのが遅れたりする危険性を指摘。「男性のように携帯電話などでこまめにコミュニケーションをとってほしい」と話す。

 ただし原則は宿泊療養で、斎藤教授も「自宅は、家庭内感染のリスク、容体急変時の対応が難しい」と話す。

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