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日本一雪深いのは、山形県西川町志津地区だ――。2月19日午前8時、同地区の積雪深は今季最高の466センチを記録した。気象庁の観測地点で同時刻の全国最高値を観測した青森市・
県には1973年度から同地区の記録が残る。最高値は74年2月に記録した790センチ。今も観測を続ける観測地点で、史上1位の566センチ(2013年)を記録した酸ヶ湯を圧倒する。
西川町は、標高1984メートルの月山の麓にあり、温泉宿が並ぶ同地区は標高約700メートルに13世帯42人が暮らす。
観測は、県の委託を受けた、温泉宿「清水屋旅館」を経営する今野信秋さん(70)が、毎年11月から雪がなくなる6月上旬まで、午前8時と午後4時に行っている。旅館の玄関先には、気象庁が地域気象観測システム(アメダス)導入前に使っていたのと同様の物さし「雪尺」(7メートル)が垂直に立っている。雪壁に約4メートルのはしごをかけてのぼり、目視で記録する。
今野さんは「この冬は、半日で40~50センチ積もる近年にない大雪。ここは本当に日本一雪深い集落だと知ってほしい」と話す。
山形大の八木浩司教授(地形学)によると、日本海からの湿った季節風が、月山の切り立った斜面で急上昇するため、雪雲が発生しやすく、風下の志津地区に大雪を降らせるという。
今野さんによる観測は、父千春さんが、近くのダム建設時に国から委託されたのが始まりという。国土交通省東北地方整備局最上川ダム統合管理事務所に問い合わせると、同所には54年度から志津地区の記録が残っていた。
八木教授は「定住集落でこれほど長く、観測している例は他にはない。人が住む場所の積雪量では、日本一ではないか」と指摘する。
西川町は冬の観光資源に活用しようと、2019年12月に「日本一の『月山』雪国宣言」を行い、雪を観光資源とすることを打ち出した。
昨年12月には、そりや雪面を滑るバナナボートなどで遊べる「月山スノーランド」を開設。観光客の誘致に力を入れている。
同町商工観光課の柴田知弘観光係長(49)は「雪は除雪に苦労する厄介者だったが、今後は観光の宝と位置づけてPRしていきたい」と話している。