「無縁墓」全国的に増加、行政は対応に苦慮「親族探すだけで1年」「墓石の撤去に20万円かかる」

スクラップは会員限定です

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

 管理する親族らがいなくなった「無縁墓」が全国的に問題になる中、栃木県内でも公営墓地のある18市町のうち、少なくとも7市町で無縁墓が確認されていることが、読売新聞の取材で分かった。無縁墓は墓地が荒れる要因になるほか、承継者を探す手間がかかり、墓石の撤去などで公費負担も発生するため、各市町は対応に苦慮している。(井上暢)

清掃、除草されず

 「墓地の使用者を探しています」。那須塩原市の市営赤田霊園の一画では、墓石の前にこんな看板が立っている。周囲には高さ60センチほどの雑草が生い茂り、ポリ袋のゴミが落ちていた。

使用者が所在不明となり、荒れつつある墓。使用者を探す看板が立つ(昨年11月、那須塩原市の赤田霊園で)=画像の一部を修整しています
使用者が所在不明となり、荒れつつある墓。使用者を探す看板が立つ(昨年11月、那須塩原市の赤田霊園で)=画像の一部を修整しています

 市環境課によると、この墓は管理する人が亡くなるか音信不通になり、使用料が滞納されたまま、引き継ぐ縁故者も見つかっていない。こうした無縁墓は年々増え、現在は霊園全917区画のうち100区画近くに上るといい、同課の担当者は「清掃や除草がされないので周囲の墓にも迷惑がかかる」と頭を抱える。

 少子高齢化や核家族化が進む近年、無縁墓の増加は社会問題になりつつある。墓地が荒廃し、不法投棄の温床になる恐れがあるうえに、劣化した墓石が災害時に倒れる危険性もある。総務省は昨年、初の実態調査の結果を公表。2020年度末時点で公営墓地がある全国765市町村のうち、約6割で無縁墓が確認されていた。

「手を付けられない」

 県内も例外ではない。読売新聞の取材では、那須塩原市以外にも大田原市で3区画、那珂川町で1区画、栃木市で複数区画あることが判明。佐野市でも過去に存在したという。さらに、宇都宮、日光市は「数は不明だが存在する」、鹿沼、矢板市は「無縁墓と認定していないが、使用者不明や承継拒否の墓はある」などと、それぞれ回答した。

 無縁墓は、管理料滞納をきっかけに使用者の状況を調べ、縁故者を探して承継の意思確認をするなど、自治体にとって膨大な追跡・確認作業が必要となる。日光市の担当者は「親族を探すだけで1年かかる場合もある」と嘆く。

 さらに、無縁墓を解消するには合葬墓などに遺骨を移し、墓石を撤去する手続きが必要となるが、墓地埋葬法には墓石の取り扱いに関する規定がない。各市町の担当者は「整理したいが墓石の撤去に20万円ほどかかる」(栃木市)、「墓石の扱いが未定で、手を付けられない」(大田原市)、「墓が承継されない事態を想定しておらず、改葬には条例改正が必要」(那珂川町)などと頭を悩ませる。

 こうした中、佐野市や塩谷町は承継先をたどりやすくするため、使用者が市町外に居住する場合、代理人や保証人として市町民1人を指定させ、氏名や住所を把握するようにしている。

 また、宇都宮市は市墓園条例を改正して無縁墓への対応を規定。親族が承継を拒否した場合、墓石に1年間公告した後で改葬し、墓石も石材業者に依頼して撤去している。市生活安心課の福田衛課長は「国は墓石の取り扱いの根拠を示すなど、社会の変化を踏まえて墓地行政の改善を進めてほしい」と訴えた。

スクラップは会員限定です

使い方
「社会」の最新記事一覧
記事に関する報告
4931139 0 社会 2024/01/15 07:00:00 2024/01/15 08:37:02 2024/01/15 08:37:02 https://www.yomiuri.co.jp/media/2024/01/20240114-OYT1I50055-T.jpg?type=thumbnail

主要ニュース

セレクション

読売新聞購読申し込みキャンペーン

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)