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岸田首相は21日に行われた全国漁業協同組合連合会(全漁連)の坂本雅信会長らとの面会で、風評被害対策に万全を期す考えを伝えた。東京電力福島第一原子力発電所の処理水の海洋放出に踏み切った後も、地元の漁業者らに寄り添っていく姿勢を改めて示す狙いがあった。
首相は面会の冒頭、「漁業者の皆様がこれまで通り、漁業を続けたいという思いを重く受け止めている」と述べた。その上で、放出作業が長期にわたることを踏まえ、「国が全責任を持って、必要な対策を講じ続けることを約束する」と強調した。
首相がこの日、坂本氏らと面会したのは、放出の最終判断を前に、漁業者の考えを直接確認するとともに、安全性や風評被害対策を説明して丁寧な姿勢を示すためだった。
被災地の漁業関係者の中には依然、処理水の放出を懸念する声が根強い。宮城県漁協理事で、同県亘理町のノリ養殖業の男性(61)は、政府の処理水の放出方針に、「風評被害がこれ以上起きないことを祈るしかない」と表情を曇らせる。
政府は被災地の理解を促進する上でカギを握るのは風評被害対策だとみている。
政府はこれまでに、風評被害が生じた場合に水産物の買い取りなどに投じる300億円の基金のほか、漁船の燃料費支援などに充てる500億円の基金を創設した。
21日の面会では、首相は全漁連の要望を踏まえ、「(放出後の)フォローアップ態勢もしっかりと作っていく」と語り、水産予算とは別の予算措置を講じる方針も明らかにした。坂本氏は「非常に重い発言だと受け止めている」と述べ、首相の発言を評価した。
首相は坂本氏らとの面会後、記者団に、「漁業者との意思疎通を継続的に行っていくことが何よりも重要であり、政府を挙げて寄り添った対応を行っていく」と話した。