[時代の証言者]国境なき歌を求めて 加藤登紀子<28>最愛の夫との別れ

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 2000年、私は国連環境計画の親善大使に任命されました。世の中に広く環境問題を伝えるため、世界各地の環境破壊が進む現場を視察する仕事です。

[時代の証言者]国境なき歌を求めて 加藤登紀子 79<1>平和願いアルバム作り
夫、藤本敏夫との思い出を語る(東京都渋谷区で)=鈴木竜三撮影
夫、藤本敏夫との思い出を語る(東京都渋谷区で)=鈴木竜三撮影

 地球温暖化に伴う海面上昇で水没の危険がある南太平洋のツバル、旧ソ連時代のかんがい事

業のために大きく面積を減らし、塩害の被害も出ているアラル海(ウズベキスタン、カザフスタン)、永久凍土溶解によって生態系への影響や温室効果ガスであるメタン発生が懸念されるモンゴルなど、問題を目の当たりにしました。11年までの在任期間中に20か国近く訪れました。

 《地球温暖化は工場や自動車などから排出される二酸化炭素などが原因で、地表付近の温度が上昇する現象。世界の平均気温は過去100年間で0・74度上昇したという。温暖化が進めば氷河が解けて海面が上昇する恐れも指摘される》

 環境問題は、夫の藤本敏夫が1960年代から取り組んでいました。千葉・鴨川で鴨川自然王国を運営。そこで有機農業を実践し、自然との共生を訴えてきました。親善大使の仕事では、夫の経験が役に立つはず。そんな計算もありました。しかしその夫に肝臓がんがみつかり、2001年に手術を受けたのです。

 02年正月。自然王国の座敷で娘たちとともに新年を祝いました。「来年はもうここにはおらんだろうな」。彼が漏らした言葉に胸が締め付けられました。さらに肺への転移が見つかり、都内の病院に入院しました。

 7月28日でした。仕事で岡山に出発する前に病院に寄ると、ヘッドホンをしてCDを聴いているところでした。「ちょっと待て、最後まで聴かせろ」と、私が話そうとするのを制したのです。聴き終わると今後の治療やホスピス移送について話しました。

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4382646 0 時代の証言者 2023/07/26 05:00:00 2023/07/26 05:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2023/07/20230725-OYT8I50101-T.jpg?type=thumbnail

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