米大統領選、共和党候補は親イスラエル…ユダヤ系・福音派票を狙う
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【ワシントン=淵上隆悠】パレスチナ情勢でイスラエル寄りの姿勢を見せるバイデン米大統領と競うように2024年米大統領選への出馬を表明している野党・共和党候補がイスラエルに寄り添う姿勢を見せている。ユダヤ系米国人からの献金や信仰上の理由でイスラエル支援を唱えるキリスト教福音派からの支持獲得が狙いだ。
大統領選の共和党指名候補争いでトップを走るトランプ前大統領の陣営は19日、バイデン氏が国民向けのテレビ演説を始める直前に声明を出し、「イスラエルで起きている大惨事は、いかさまバイデンの無能さや弱さが引き起こしたものだ」と厳しく非難した。
バイデン氏が18日のイスラエル訪問中に表明したパレスチナ自治区の人道支援に対する1億ドル(約150億円)の拠出についてトランプ陣営は「米国の恥で、イスラエル国民への侮辱だ」と主張した。
ニッキー・ヘイリー元国連大使は19日、自身のX(旧ツイッター)で、バイデン氏はイスラエルと対立するイランに迎合的だと攻撃した。マイク・ペンス前副大統領も20日の米CNNのインタビューで、「私が大統領なら、(イスラム主義組織)ハマスに対し、『人質を全員解放しろ、さもなければ乗り込むぞ』と警告する」と述べ、バイデン氏は弱腰だと強調した。
大統領選の有力候補たちが親イスラエルの姿勢を懸命にアピールするのは票の獲得に直結するからだ。
ユダヤ系は民主党支持者が多く、米民間調査機関ピュー・リサーチ・センターによると7割に上るとの調査がある。
共和党候補がターゲットとしているのは米国民の4人に1人と言われるキリスト教右派の福音派だ。共和党支持者が多い。聖書の記述を「神の言葉」(福音)ととらえて忠実に守り、イスラエルを「神がユダヤ人に与えた地」だと信じている。
資金の獲得にも影響する。ユダヤ系は大口献金者が多く、親イスラエル・ロビー団体の活動も活発だ。
有力ユダヤ系団体「米イスラエル広報委員会(AIPAC)」は、イスラエルに対するハマスの攻撃を受け、ホームページで「今停戦すれば、イスラエルが侵略者として描かれ、ハマスが(パレスチナ自治区)ガザを支配し続けることを許すことになる」と訴える。同団体の広報は、米紙ワシントン・ポストの取材に対し、「ハマスの攻撃からわずか2日間で、民主、共和両党議員の95%がイスラエルに連帯する声明を出した」と説明し、米政界に対して及ぼす影響力を誇示した。