体操 世界選手権 男子団体が金メダル 2015年大会以来8年ぶり

ベルギーで開かれている体操の世界選手権は3日、男子団体の決勝が行われ、日本が8年ぶりの金メダルを獲得しました。

ベルギーのアントワープで開かれている体操の世界選手権は、大会4日目の3日、男子団体の決勝が行われ、予選の上位8チームが出場しました。

決勝は6つの種目で各チーム3人が演技して得点の合計で争われます。

予選1位の日本は8年ぶりの金メダルを目指して、橋本大輝選手、萱和磨選手、南一輝選手、千葉健太選手、杉本海誉斗選手の5人で臨みました。

日本は2種目めのあん馬で初出場の千葉選手がF難度の「ブスナリ」を決めたあと、落下のミスで13.066と得点を伸ばせなかったことなどから前半の3種目を終えて4位と出遅れます。

しかし、4種目めの跳馬で南選手が15.000をマークしたほか、橋本選手が難度の高い「ロペス」を決め、14点台後半の高得点をあげて流れを引き寄せ、4種目を終えた時点で日本が首位に立ちました。

さらに、5種目めの平行棒では大会直前、けがをした選手に代わって補欠から繰り上がり代表入りした杉本選手が足先まで伸びた美しい演技で14.833をマークするなど3人全員が着地までしっかり決めてライバルの強豪・中国を引き離しました。

最終種目の鉄棒でも3人目の橋本選手がG難度の「カッシーナ」など手放し技を決めると、着地を完璧に決めて日本がリードを守りきり、6種目の合計、255.594で金メダルを獲得しました。

日本の男子団体が世界選手権で金メダルを獲得したのは2015年の大会以来8年ぶりで、来年のパリオリンピックへ弾みをつけました。

銀メダルは中国で253.794、銅メダルはアメリカで252.428でした。

橋本大輝「人生で一番うれしい金メダル」

エースの橋本大輝選手は「きょうは着地を決めてチームに勢いをつけることを目標としてきたので、やりきったなという強い思いがある。みんなで金メダルとることができて最高だ。人生で一番うれしい金メダルだ」と笑顔で話していました。

5種目めの平行棒で高得点をマークした杉本海誉斗選手は「今まで味わったことがないくらいの緊張があったが、その中でも着地を決めてチームに勢いをつけて18演技全員でつなぐということを意識して、その結果が金メダルになって本当に最高だ」と話していました。

また、ゆかと跳馬のスペシャリスト、南一輝選手は「ゆかでは思ったより点数が出なかったが、跳馬で着地まできめてそこからいい流れができてみんなで優勝に近づけた。最高の気分だ」と話していました。

キャプテンの萱和磨選手は「すべての種目でトップバッターを任されて、絶対にミスしないでつなぐ、着地を止めてつなぐという思いだった。無事にできたのでよかった。絶対に来年のパリオリンピックにつながる」と振り返りました。

初代表で4種目に出場した千葉健太選手は「本当にうれしい。頑張ってやってきたことが報われた気持ち。最初から最後までみんなに助けられて本当にありがとうという思いだ」と話していました。

内村航平コーチ 代表初帯同で「変化」

今大会には、オリンピックの体操で個人総合では2連覇、世界選手権で6連覇を果たした内村航平さんが日本代表のコーチとして初めてチームに帯同しました。

「毎日近くで見ていると意外と違いに気づけないことがある」と、内村さんはあえて選手たちの輪に加わることはしません。客観的に選手を捉え、より的確なアドバイスを送れるようにと考えているからです。

そんな内村さんがチームに感じたというのが「まだちょっと甘い」。

内村さん自身、団体で金メダルを獲得したのは6回目の世界選手権でした。団体で頂点に立つことの難しさ。そして常に本番を想定し、練習から緊張感を持って取り組むことの大切さ。内村さんはこれまで培った経験や考え方を伝えたといいます。その後は、練習でも演技前は本番と同じように必ず手をあげて臨むなど、選手たちの意識は大きく変化しました。

大会前「技術に関しても、精神的に自分の体をコントロールするところも一番だし、航平さんがいると心強い」と話していた橋本選手。チームは“レジェンド”のことばと存在を心の支えに、悲願の団体金メダルを奪還しました。

「全員で演技をつなぐ」代表メンバーの強い思いで金メダル

8年ぶりの金メダルをたぐり寄せたのは、「全員で演技をつなぐ」ことを胸に刻んだ代表メンバーの強い思いでした。

最大のライバル、強豪・中国は、主力の一部を杭州で開かれているアジア大会に派遣し、団体の金メダル獲得が期待されていた日本。

それでも、日本代表の佐藤寛朗ヘッドコーチは、つり輪や平行棒が強い中国に技の難度を示すDスコアだけで1点以上差をつけられるのではないかとふんでいました。

ゆかとあん馬でどれだけ差を広げられるかが大きな鍵となった今大会。

予選で上々の滑り出しを見せたのは個人総合で日本勢トップとなった、初出場の27歳、千葉選手です。

1種目めのつり輪でミスがあったものの、そのあとは持ち味の足先まで伸びた美しい演技でまとめ、85.799の高得点をたたき出しました。

東京オリンピック代表の萱選手も全種目で14点台を出すなど安定した演技を見せ、予選1位で団体の決勝に進んだ日本。

ところが決勝では、スタートから苦戦を強いられました。

佐藤ヘッドコーチが鍵とした1種目めのゆかは予選より2点近く得点を下げ、続くあん馬でも落下のミスなどから3種目を終えて4位。

それでも「18の演技を全員でつないで着地を決める」と前を向いていたという選手たち。

そのあとは、4種目めの跳馬でキャプテンの萱選手が難度の高い「ロペス」を決めると、橋本選手、それに南選手も強化合宿で取り組んできた着地をしっかり決めて完成度の高い演技を見せ、立て直します。

勢いに乗った日本は、続く平行棒で3人全員が14点台後半をマークして強豪・中国を突き放し、最後の鉄棒もミスのない演技でリードを守りきりました。

大会前、キャプテンの萱選手が代表メンバーについて「いろいろな色がある5人。ただ5人に共通しているのが団体金メダル。一人一人が任された種目をつなぐことが金メダルにつながっていく」と話したそのことばどおり、全員で悲願の金メダルをたぐり寄せました。

2015年の世界選手権で、37年ぶりに団体金メダルを獲得した日本は、その翌年、リオデジャネイロオリンピックで団体金メダルにつなげています。

「日本の体操が一番だと証明したい」と、話すのはエースの橋本選手。

来年のパリオリンピックに向け、団体金メダル獲得への思いをより強くしています。