国連安保理 人道支援の戦闘一時停止など 米の拒否権で否決

イスラエルとイスラム組織ハマスの衝突をめぐり、国連安全保障理事会では人道支援のための戦闘の一時的な停止などを求める決議案の採決が行われ、15か国のうち日本を含む12か国が賛成しましたが、アメリカが拒否権を行使して否決されました。アメリカは、イスラエルの自衛権に言及がないなどと主張しましたが、各国からは遺憾の意が表明されました。

イスラエルとハマスの衝突をめぐっては、国連安保理に議長国のブラジルが
▽ハマスによる攻撃や誘拐を非難し人質の解放を求める一方で
▽人道支援のための戦闘の一時的な停止や
▽イスラエルがガザ地区北部の住民に出した退避通告を撤回するよう求める決議案を、提出していました。

採決は18日午前、日本時間の18日夜に行われ、理事国15か国のうち
▽日本やフランスなど12か国が賛成し
▽ロシアとイギリスが棄権しましたが
▽常任理事国のアメリカが拒否権を行使し、決議案は否決されました。

アメリカのトーマスグリーンフィールド国連大使は「決議案にはイスラエルの自衛権が言及されておらず失望している」と述べた上で、バイデン大統領によるイスラエル訪問などの外交努力の成果を待つべきだと主張しました。

これに対してロシアのネベンジャ国連大使は「われわれはアメリカの偽善とダブルスタンダードを目の当たりにした。アメリカは解決策を見つけることを望んでいなかった」と述べ、アメリカを強く非難しました。

このほか各国からも、決議案が否決されたことに相次いで遺憾の意が表明されました。

安保理でアメリカが拒否権を行使したのは、およそ3年ぶりで、アメリカのイスラエルを擁護する姿勢が改めて浮き彫りになりました。

ガザ地区で起きた病院爆発も協議 各国の反応は

国連安保理では、決議案の採決に続いて、ガザ地区の病院で起きた爆発をめぐって、対応を協議する緊急会合が開かれました。

各国からは、病院への攻撃を非難するとともに、客観的な調査を求める意見が相次ぎ、このうち日本の石兼国連大使は「罪のない人たちが犠牲になったことに強い憤りを感じる。いかなる理由でも病院や市民に対する攻撃は正当化できない」と非難した上で、ガザ地区に人道支援物資を届けなければならないと訴えました。

一方、ロシアのネベンジャ国連大使は「アメリカは人道的で道義的な義務である決断ができなかった」と述べたほか、中国の張軍国連大使は「差し迫った人道危機を前に、安保理が沈黙する理由も決定を遅らせる口実もない」と述べ、戦闘の一時的な停止などを求める決議案に拒否権を行使したアメリカを非難しました。

これに対してアメリカのトーマスグリーンフィールド国連大使は「アメリカは一般市民の死傷者を最小限に抑えるため、イスラエルや地域の国々、そして国連などと引き続き協力していく」と強調しました。

松野官房長官「適切な形で意思表示できなかったことは残念」

松野官房長官は、午前の記者会見で「わが国は、ガザにおける人道状況などに鑑み、決議案の大部分は支持できることから賛成票を投じた。事態の早期沈静化に向けてさまざまな外交努力をしてきたが、安全保障理事会として適切な形で意思表示できなかったことは残念だ」と述べました。

そのうえで「アメリカは、決議案に反対するとともに、人道状況の改善や人命を救うことができる直接的な外交努力を支援するものであるべきだと述べており、バイデン大統領や関係者による外交努力を最大限支持し期待している」と述べました。