米大統領選 共和党候補者選び初戦 アイオワ州 各候補支持訴え

アメリカ大統領選挙に向けた野党・共和党の候補者選びの初戦、中西部アイオワ州の党員集会が日本時間の16日行われます。アイオワ州が記録的な寒波に見舞われる中、トランプ前大統領など各候補者が直前まで支持を訴えました。

ことし11月のアメリカ大統領選挙に向けた共和党の候補者選びの初戦となる党員集会は、現地時間の15日夜、日本時間の16日午前、中西部アイオワ州で行われます。

共和党の候補者選びは全米を対象にした各種世論調査の平均で、共和党支持層の60%以上から支持を集めるトランプ前大統領を、ヘイリー元国連大使やフロリダ州のデサンティス知事などが追う展開となっています。

トランプ前大統領など候補者らは党員集会前日の14日、それぞれ集会を開きました。

アイオワ州は、現在、記録的な寒波に見舞われ、気温は氷点下20度を下回っていて、候補者が一部、集会への出席を取りやめるなど影響が出ています。

このため、厳しい寒さが党員集会への参加率や選挙結果にどのような影響を与えるのかも注目されています。

初戦のアイオワ州の結果は、その後の候補者選びの行方に大きな影響を与えるため、どの候補者が実際に勢いを示せるのかに全米の関心が集まっています。

米大統領選 候補者選びと「代議員」とは

アメリカ大統領選挙では、11月の本選挙を前にまず民主・共和両党の大統領候補を決める党の候補者選びが行われます。

両党の大統領候補を決めるのは、各州や自治領などに割りふられた「代議員」による投票です。

代議員がどの候補者に投票するかは、それぞれの州や自治領などで行われる予備選挙や党員集会の結果にもとづいて決められます。

各候補者には予備選挙での得票数などに応じてそれぞれ代議員が配分され、過半数の代議員を獲得した候補者が、夏に開かれる全国党大会で正式に大統領候補に指名される仕組みです。

今回、野党・共和党の候補者選びでは代議員の総数は2429人で、指名に必要な過半数は1215人です。

▽今月15日の初戦の中西部アイオワ州には代議員40人、
▽今月23日の第2戦の東部ニューハンプシャー州には代議員22人が割りふられています。

また、3月5日には西部カリフォルニア州や南部テキサス州など全米15の州とアメリカ領サモアで予備選挙や党員集会が一斉に行われるスーパーチューズデーが控えています。

代議員の合計は全体のおよそ36%にあたる874人に上り、指名獲得争いの行方を左右する大きなヤマ場となります。

アイオワ州党員集会とは

アイオワ州はアメリカの中西部に位置する、人口320万余りの州です。
農業が盛んで白人が人口の83%を占め、保守的な有権者が多いと言われています。

アイオワ州の党員集会は、大統領選挙に向けて共和党が各州で実施する党員集会や予備選挙の中で最も早く行われるため常に注目されてきました。

前回までは民主党もアイオワ州を最初の候補者選びの場としてきましたが、多様性を反映すべきだという指摘などを踏まえ、今回の大統領選挙から黒人の割合が多いサウスカロライナ州に切り替えました。

共和党の党員集会は、予備選挙とは異なり、それぞれの会場で参加者が各陣営の代表の演説を聞いたうえで投票を行う仕組みとなっています。

アイオワ州では、各地区にある1600以上の公共施設や個人の自宅などに党員が集まります。

大統領選挙の幕開けとなるアイオワ州の党員集会と次いで行われるニューハンプシャー州の予備選挙の結果は、候補者選びのその後の流れを左右します。

特に最初に行われるアイオワ州での勝敗の行方や候補者の戦いぶりは、その後の資金集めや選挙戦に大きな影響を与えると言われ、候補者は何か月も前から何度も現地に入り支援者とともに集会を開いたり、多額の広告費をつぎ込んだりして支持の拡大を図ります。

各候補者 支持訴え

アイオワ州の党員集会を翌日に控えた14日、各候補者は集会を開いて支持を訴えました。

トランプ前大統領は「今度の大統領選挙でバイデン氏をホワイトハウスから追い出す。私が大統領になれば、あなた方が置き去りにされることはない」と述べました。

ヘイリー元国連大使は「よきにつけ悪しきにつけ、トランプ氏には混乱がついて回る。アメリカをめちゃくちゃにし、世界を火の海にし、また4年間も混乱が続く状況を許してはならない。アメリカ国民はそれでは生き延びられない」と述べました。

また、フロリダ州のデサンティス知事は「トランプ氏は自分のために、ヘイリー氏は献金者のために立候補している。私は、あなたやあなたの家族、そしてこの国を立て直すために立候補している唯一の候補者だ」と述べました。

デサンティス氏“トランプ氏と戦えるのは私だけ”支持呼びかけ

野党・共和党の大統領候補の1人、フロリダ州のデサンティス知事は党員集会を翌日に控えた14日夜、州都デモイン郊外で集会を開きました。

デサンティス氏は地元フロリダ州で保守的な政策を次々と打ち出し、一時はトランプ氏の最大のライバルとも言われました。

しかしそのあと、党内の支持は伸び悩み、最近はヘイリー元国連大使についで各種世論調査の平均で3番手に後退しています。

デサンティス氏は支持者を前に演説し「トランプ氏は自分自身と自分の問題を第1に考えて選挙戦を展開している。私は公約を100%実行する唯一の候補者だ」と述べてトランプ氏への批判をこれまでよりも一段、強めたうえで自身への支持を呼びかけました。

デサンティス氏は集会後、記者団に対し「極寒の天候だったが大勢の人たちが集まってくれて興奮している。トランプ氏と共和党の候補者選びで戦える可能性があるのは私だけだ」と述べました。

“共和党内 トランプ氏支持は60%超” 政治情報サイト

野党・共和党内ではトランプ前大統領が大統領候補として最も多くの支持を集め、ほかの候補者を大きく引き離しています。

政治情報サイト「リアル・クリア・ポリティクス」のまとめによりますと、今月14日時点の各種世論調査の平均では、共和党の候補者選びでトランプ氏を支持するとした人は61.4%に上っています。

トランプ氏は去年、4つの刑事事件で起訴されましたが、共和党支持者からは依然として高く支持されています。

起訴は自身への選挙妨害だとするトランプ氏の主張が、支持層に一定程度受け入れられていることが背景にあるとみられます。

2番手につけているのがここにきて支持を伸ばしているヘイリー元国連大使で、12%となっています。

ヘイリー氏は、今月10日に行われたテレビ討論会で「トランプ氏が政権を取ればあと4年混乱が続く」と発言するなど、トランプ氏への対抗姿勢を強めています。

今月、共和党の大統領候補のうち、トランプ氏に対する批判の急先ぽうだったニュージャージー州のクリスティー前知事が選挙戦からの撤退を表明したため、トランプ氏と距離を置く共和党支持者がヘイリー氏への支持に回り、支持率がさらに上昇するのではないかという見方も出ています。

3番手はフロリダ州のデサンティス知事で、10.7%となっています。

地元のフロリダ州で実現した保守色の強い政策を実績としてアピールし、一時はトランプ氏の最大のライバルとも言われましたが、支持は伸び悩んでいます。

4番手は「トランプ氏を超えるアメリカ第一主義」を掲げる起業家のラマスワミ氏で、4.3%となっています。

トランプ氏の立候補資格に疑義も

共和党のトランプ氏は大統領選挙に立候補する資格そのものをめぐって疑義も示されています。

西部コロラド州の最高裁判所は先月、トランプ氏が大統領選挙に向けた州の予備選挙に立候補する資格はないとする判断を示しました。

根拠とされたのが合衆国憲法修正第14条3項に規定された「憲法を支持する宣誓をしたあとに、アメリカに対する暴動や反乱に関与するなどした場合、国や州の官職に就くことができない」という条項で、コロラド州の最高裁はトランプ氏が3年前の連邦議会への乱入事件に関与したと認定しました。

トランプ氏は判断を不服として上訴し、連邦最高裁判所はこれを審理するとして来月8日に口頭弁論を行うと発表しました。

アメリカのメディアは連邦最高裁が口頭弁論を早い時期に行うと決めたことから、コロラド州を含め、候補者選びが多くの州で一斉に行われる3月5日の「スーパーチューズデー」までに何らかの判断を示す可能性があるとも伝えています。

アメリカの有力紙ニューヨーク・タイムズによりますと、トランプ氏の立候補資格を巡っては、今月12日時点で少なくとも全米の半数以上にのぼる35の州で同様の訴えや申し立てが裁判所や州務長官などに対して行われ、このうち17の州でまだ判断が示されていないということです。

連邦最高裁の判断は、これらの州にも影響を与えるとみられるだけにその行方に関心が集まっています。

共和党候補者選び 今後の日程は

共和党の候補者選びのための予備選挙や党員集会は、今月15日の中西部アイオワ州を幕開けに6月初旬まで全米各州や自治領などで順次行われる予定です。

▽第2戦は今月23日に東部ニューハンプシャー州で予備選挙が、
▽第3戦は来月8日に西部ネバダ州で党員集会が予定されています。

また、ヘイリー元国連大使がかつて知事を務めた南部サウスカロライナ州では来月24日に予備選挙が予定されています。

3月5日には、西部カリフォルニア州や南部テキサス州など全米15の州とアメリカ領サモアで予備選挙や党員集会が一斉に行われる「スーパーチューズデー」が控えていて、大きなヤマ場となります。

予備選挙と党員集会を通じて勝算がないと判断した候補者は選挙戦から撤退していき、党の候補者が絞り込まれていきます。

共和党は、7月15日から18日にかけて中西部ウィスコンシン州で全国党大会を開き、予備選挙などの結果を受けて、11月5日の本選挙に臨む党の大統領候補を正式に指名します。

一方、今回の共和党の候補者選びは党の最有力候補のトランプ前大統領の刑事裁判が並行して行われる異例の選挙戦となります。

トランプ氏は現在、4つの刑事裁判を抱えています。

このうち2021年に起きた連邦議会への支持者らの乱入事件をめぐり、大統領選挙の結果を覆そうとしたなどとして起訴されている事件は、「スーパーチューズデー」の前日の3月4日に初公判が予定されています。

また、不倫の口止め料の支払いをめぐり帳簿などの業務記録を改ざんしたとして起訴された事件の初公判は3月25日に予定されています。

さらにトランプ氏が大統領を退任後、アメリカや外国の核兵器や軍の能力に関する情報など、最高機密を含む文書を不正に自宅で保管していたとして起訴された事件の初公判は5月20日に予定されています。

こうした裁判が選挙戦にどのような影響を与えるのかも注目されています。