目指せ!時事問題マスター

1からわかる!新型コロナ(3)一体、いつまで続くの?【2022年2月 改訂版】

2022年02月24日
(聞き手:白賀エチエンヌ 堤啓太)

  • お問い合わせ

デルタ株が落ち着いたと思ったら今度はオミクロン株・・・一体いつまで不自由な生活が続くの?いつになったら元どおりの生活ができるの?切実なギモンについて、医療や科学などが専門の中村幸司解説委員に1から聞きました。(2022年2月改訂)

 

日常に戻るカギは…

学生

もう2年以上も感染の波が繰り返されていますよね。

不自由な生活はまだ続くんでしょうか?

感染対策をしながらの生活は今後も続くでしょうね。

中村
解説委員

ただ、オミクロン株は、感染力が強い一方、重症化しにくいということも見えてきています。

感染者が多くなることと、重症者の割合が小さいことをどう考えて対策していくかの模索が続くかもしれません。

中村幸司解説委員は医療や科学などが専門。感染症に詳しく、新型コロナウイルスについては、中国で確認されて以降、一貫して取材を続けています。

とはいえ、早く日常に戻りたいとは思います。

わかります。

日常に戻ったという気分になるには「新型コロナに感染しても命の危険までは感じないで済む」というくらいの安心感みたいなものが、必要ですよね。

中村解説委員が解説する「時論公論 オミクロン株 ここまでわかった特徴と第6波対策」はこちらからご覧ください

学生
白賀

そんな日がいつか来るんでしょうか?

そのカギを握るのは治療薬とワクチンです。

ワクチンのことは話題になりますが、治療薬ってあまり聞かない気が…。

今どうなっているんですか?

国内では新型コロナの治療薬としてこれまでに8つの薬が承認されています。(2022年2月時点)

①~④は別の感染症や病気の治療を想定して作られた薬です。

①のみ、ことし1月から軽症の患者も対象に加わりましたが、ほかはすべて中等症から重症の患者に使われる薬です。

インフルエンザにかかったときに服用する飲み薬のように、比較的軽いうちに飲んで重症になるのを抑えてくれる薬の開発が待たれていました。

そして、新型コロナ用に作られたのが下の図の⑤~⑧。どれも軽症あるいは中等症の人に投与する薬です。

「中和抗体薬」ってなに?

このうち⑤と⑥は、2021年に承認された「中和抗体薬」というものです。

どんな薬なんですか?

「中和抗体薬」は、体の中でウイルスが細胞に侵入するのを邪魔する「抗体」を人工的に作った薬で、点滴で体に入れます。

⑤は2種類の抗体を混ぜています。

しかし、オミクロン株の変異の影響でいずれの抗体もウイルスの突起部分にくっつきにくくなり効果が低下するとされています。

このため、オミクロン株の感染者には投与が推奨されていません。

一方、⑥の薬はオミクロン株の変異に対しても効果は維持されるとされています。

飲み薬の効果は

そして⑦と⑧は飲み薬です。どんな薬なのか、気になっている人も多いんじゃないでしょうか。

点滴より使いやすそうですね。

そうですね。

入院・死亡するリスクが、⑦ラゲブリオが30%低下※、⑧パキロビッドパックは89%低下したとされています。

※投与した人としなかった人の合計約1400人の結果。約760人の結果では48%となっている。

また、オミクロン株にも一定の効果があるとされています。

飲み薬はいずれも、ウイルスが侵入したあと体の中で増えるのを邪魔するんです。

イメージ図を使って説明しますね。

⑦ラゲブリオは、ウイルスが細胞の中で増える際の「複製工場」の段階を邪魔します。

⑧パキロビッドパックは、工場を作る「準備」の段階を邪魔します。工場ができないのでウイルスの増殖を抑えるんです。

塩野義製薬が開発中の薬も同じ段階で作用します。

中和抗体薬のうちの⑤がオミクロン株に対して効果が低下したように、薬が作用する図のの部分を迂回できるような変異ウイルスが出現すると、その薬は効かなくなると考えられます。

ウイルスの変異で薬が効かなくなるのは心配ですね。

ただ、中和抗体薬と飲み薬では作用が異なります。

さらに飲み薬も作用の仕方が異なるものが出てきました。

いずれかの薬が効きにくい変異ウイルスが出てきても、別の薬は使える可能性があります。

なるほど。

変異を繰り返す新型コロナウイルスに対応できるように、作用の異なる薬、言いかえると「多様な薬」を開発することが大切だと思います。

さらに、重症になるかならないかを、より早期に診断できる方法を見つけることも重要です。

そうした患者に限られた医療を提供すれば、救える人も増えると考えられるので、収束に向けて大きく前進すると思います。

ワクチン追加接種がカギ

治療薬とならぶ、もう1つのカギがワクチンです。

下の図を見てほしいんだけど、国内でワクチンの接種を2回済ませた人の割合は、2月18日時点で79%

さらに、オミクロン株対策として、3回目の接種を進めることが重要とされています。

今後、この接種率をどこまで上げられるかが大事になってきます。

今後も定期的な接種が必要になるかどうかはまだわかりませんが、さらに追加接種が求められる可能性があります。

ワクチンや治療薬の開発、それに診断方法の確立が進むことによって、感染者が少なく、重症になる割合も数も低く抑えられる状態が続けば、新型コロナに対する安心感が社会全体に広がると思います。

それが収束につながると私は考えています。

オミクロン株にもワクチンは効くの?1からわかる!新型コロナ(4) ワクチン 3回目接種の効果は?はこちらからご覧ください。

感染対策に国境なし

そして、収束の観点からもう1つ大切なのは、世界全体でワクチン接種が進むことです。

日本が対策をしていても、海外からまた新たな変異ウイルスが入ってくるおそれがあるということですか?

そうです。

「変異ウイルスは、感染がさかんな地域で生まれる可能性が高い」と言われています。

多くの途上国では、自分の国でワクチンを作れないですし、買うための資金も十分にありません。

WHOなどが主導してワクチンを公平に分配する枠組みもあるんだけど、十分機能しているとは言えない状況です。

新型コロナウイルスの収束に向けては、1つの国だけは感染症の対策は完結できないことを念頭に、ワクチンが世界中に行き届くように尽力する必要があります。

これは、日本を含む先進国をはじめ、国際社会全体で取り組んでいくべき課題です。

過去の感染症は

感染の波が繰り返された感染症って過去にもあるんですか?

今から100年以上前の1918年から世界的に流行した「スペインかぜ」という感染症があります。当時の「新型インフルエンザ」だったんですね。

当時の世界人口の4分の1から3分の1にあたる5億人が感染し、死者は4000万人にのぼったとも推定されています。

「スペインかぜ」とみられる患者(アメリカ コロラド州・1918年)

1918年の春ごろから世界的な流行が起きていったんは収まったんだけど、その年の秋に第2波がありました。

その後、翌年の冬にも感染が拡大するなど、世界中で大流行を繰り返しました。

感染症の撲滅は本当に難しい

これまでに人類が撲滅できた感染症はあるのでしょうか?

1980年にWHOが根絶宣言をした天然痘ですね。

ワクチンができ、効果も長い期間続くものだったので世界中の人たちに接種が進められた結果、撲滅できました。

天然痘の予防接種(1974年)

天然痘・・・感染力が非常に強い感染症。急激な高熱、顔や手足などに発疹が出る。致死率は、およそ30%ともされる。ジェンナーにより初めてのワクチンが開発されたことでも知られる。WHOは1980年に世界根絶宣言を行った。

天然痘以外には撲滅できた感染症ってあるんですか?

SARSについては流行を終息させることができました。

※SARS…「重症急性呼吸器症候群」と呼ばれる。2002年に中国で報告され、翌年までの間に8000人以上が感染し、800人近くが死亡した。

2002年11月に中国で確認され、2003年7月にはWHOが流行の「終息」を宣言しました。今は感染者の報告はありません。

SARSは今回と同じコロナウイルスの一種ですが、症状が重いので、感染した人がすぐわかります。

このため、比較的封じ込めがしやすく、世界中に広がるのを防ぐことができました。

ただ、感染症の撲滅は非常に難しいんです。例えば「はしか(麻しん)」。

日本は2015年に、WHOの西太平洋地域事務局から「日本は、はしかを排除した国ですよ」って認定されたんです。

WHOの西太平洋地域事務局長(左)からはしか排除の認定通知書を受け取る塩崎厚生労働相(当時) 2015年8月

だけど、国内で「はしか」に感染する人が2016年以降報告されています。

日本の過去の予防接種制度などの影響で、30~40代くらいの世代は、はしかに免疫を持っていない人が比較的多いとされています。

こうした年代の人が海外から入ってきた「はしか」に感染したんです。

日本は排除国になったんだけど、世界中で排除したわけではないので、海外から入ってくるウイルスを防ぎきれなかったのです。

「1国だけは感染症の対策は完結できない」ということですね…。

あと、エイズは症状が出るのを遅らせたり抑えたりする薬ができましたが、ワクチン開発は長年の研究にもかかわらず、実現していません。

天然痘みたいに撲滅できた感染症はまれで、私たち人類にとっては、克服できていない感染症が非常に多いんです。

これからもwithコロナ!?

新型コロナは今後どのような立ち位置になっていくのでしょうか。

天然痘みたいに撲滅はできないだろうとみられています。

これだけ地球の隅々までウイルスが広がっているので、ウイルスをなくすことはおそらくできないだろうと

「はしか」のように、ワクチン接種で何十年も続く免疫ができ、その後はほとんどかからないということになると、感染者が減ることも考えられます。

でも、おそらくそうはなってくれなさそうです。

なぜですか?

その原因の1つはウイルスが変異しているからです。

オミクロン株

ウイルスに感染して免疫を獲得したり、ワクチンを打ったりしたとしても、次の変異したウイルスにかからないとは限りません。

インフルエンザのように繰り返しかかる感染症になるかもしれないという専門家もいます。

長く付き合うことになりそうですか?

その可能性はあると考えておいた方がいいかと思います。

編集:栗田真由子 撮影:小野口愛梨

 

新型コロナウイルスに関する他の記事は、下記からご覧ください。

詳しく知りたいテーマを募集

詳しく知りたいテーマを募集

面接・試験対策に役立つ時事問題マスター