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 2020年4月下旬、ITベンダーのブイキューブとアステリアが共同で「バーチャル株主総会」をテーマにしたオンラインセミナーを開催した。上場企業の株主総会担当者ら200人以上が視聴したという。

 「株主総会担当者は新型コロナウイルス対策で悩んでいる。バーチャル株主総会が感染拡大防止策の一助になるはずだ」。森・浜田松本法律事務所の沢口実弁護士は同セミナーでこう語った。

「バーチャル株主総会」として2020年3月に開催したブイキューブの定時株主総会。株主席が閑散としている一方でオンライン生中継用の機材が目立つ
「バーチャル株主総会」として2020年3月に開催したブイキューブの定時株主総会。株主席が閑散としている一方でオンライン生中継用の機材が目立つ
(出所:ブイキューブ)
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 バーチャル株主総会とはインターネット経由で参加・出席できる株主総会を指す。具体的には、オンライン生中継で議事を視聴したり、チャットで質問を送ったり、ネット投票で議決権を行使したりする。

高齢者が「3密」になりがちな株主総会

 経済産業省は2020年2月26日に「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」というガイドラインを公表した。沢口弁護士は同省研究会の委員を務める。公表当初はさほど注目されなかったが、ほどなく新型コロナの感染拡大が深刻になった。

 株主総会には株主が全国から集まる。ホテルの大宴会場や展示会場などに1000人規模の株主が集まる大型総会もあり、「3密」状態になって感染拡大を促しかねない。個人株主には高齢者も多く、細心の注意を払う必要がある。

 2020年3月下旬に定時株主総会を迎えた12月期決算企業は厳重な体制で臨んだが、6月には日本で多数を占める3月期決算企業の定時株主総会が控える。経産省と法務省は4月2日に「株主総会運営に係るQ&A」という文書を出した。

 同文書では株主の入場を制限したり、来場を全面的に断って「無観客」で開いたりすることを事実上容認した。ただし、「株主に対して理解を求めること」を企業側に要請している。