新幹線の高架下に、木造2階建てのオフィスビルをつくる──。そんな驚きのプロジェクトが、2022年3月の開業に向けて佳境を迎えている。日経クロステックは21年11月下旬、建設中の現場に立ち入りを許された。木の躯体(くたい)がよく見える施工途中の写真を中心に、現状を報告する。
話題のプロジェクトのため、建築関係者がたびたび名古屋まで見学に訪れているという。
計画地は、JR名古屋駅から南に徒歩数分の場所だ。「ささしまライブ24地区」という再開発エリアに位置している。頭上を東海道新幹線が走る、高架下の隙間空間が敷地になる。在来線も計画地の真横を並走している。市が高架沿いで整備中の遊歩道がすぐ隣にあり、それを挟んで向かいにストリングスホテル 名古屋が立つ。
プロジェクトの名称は「笹島高架下オフィス」。事業者は、JR東海グループの名古屋ステーション開発(名古屋市)である。設計者はMARU。architecture(マル・アーキテクチャ、東京・台東)、施工者はシーエヌ建設(名古屋市)だ。
前例がない建物なので、全体像が分かりにくいだろう。最初に構造のイメージ(アクソメ)を共有しておく。高架下の敷地面積は約1392m2、延べ面積は約986m2だ。
構造を頭に入れて、建設現場に入ってみよう。早速、高架の柱とオフィスの木造の絡み合いが見えている。高架の柱は鉄筋コンクリート(RC)に見えるが、実は鉄骨である。高架の柱と梁(はり)は約6mグリッドで並んでいる。
記者の第一印象は、高架下の空間は想像していたよりもかなり広く、天井も高いということだ。もちろん、内装工事が始まれば、基礎や天井の仕上げが入るので、オフィスとして使える空間はもう少し狭くなる。それでも仕上げ後の最高高さは9.93m、階高は3.70~5.46m、天井高は2.16~4.09mとなる計画で、2階建てのオフィスビルとしてはかなりゆとりがある。
構造を理解するうえで大切なのは、木造オフィスは完全に自立しているということだ。木躯体が高架の柱や梁に依存せず、独立している。