2015年11月11日、国産小型ジェット旅客機「MRJ」がついに初飛行を成功させた。このニュースが日本中をにぎわせたのは、部品点数が膨大で裾野が広い航空機産業が、日本の基幹産業となるポテンシャルを十分に持っているからである。世界における航空機の市場は今後も拡大していくことは確実で、MRJや「HondaJet」といった日系メーカーによる航空機の開発は、日本の航空機産業の発展を強力に後押しするはずだ。主要メーカーの取り組みから、今まさに世界へと羽ばたこうとしている日本の航空機産業の行方を占う。
羽ばたけ 日本の航空機産業
目次
-
不屈の執念が産んだ国産旅客機、日本の部品が技術革新をけん引
その瞬間、男の目には白いものが光ったように見えた。日経ものづくり
-
初飛行後に試される真の実力
三菱航空機(MRJ)
「ようやく初飛行できてほっとしているが、文字通りここから始まる。これから数千時間の飛行試験、型式証明などの道のりが続いていく」。2015年11月11日の「MRJ」初飛行後の記者会見で、三菱航空機社長の森本浩通氏は喜びを語るのと同時に、残された課題を思い、気を引き締めていた。日経ものづくり
-
複合材の新規適用でエンジンの軽量化を先導
IHI
「航空機エンジンの投資回収サイクルは、機体よりもさらに長く、15~20年はかかる」。そう語るのは、IHI取締役常務執行役員航空宇宙事業本部本部長の満岡次郎氏だ。先行技術の開発も含めて投じた巨額の開発費用は、量産が始まって機体メーカーへの引き渡しが始まればすぐに回収できるわけではない。その後も量産体勢…日経ものづくり
-
航空エンジン大手を魅了する加工技術
三菱重工航空エンジン
「当社の航空機エンジン向け部品は、市場の成長率を上回る勢いで伸びている。初期投資が巨大なビジネスを成功させるため、資本力と生産基盤を強化する目的で親会社から独立した」。こう語るのが、2014年秋に三菱重工業(以下、三菱重工)から独立した三菱重工航空エンジン取締役社長の島内克幸氏だ。日経ものづくり
-
自動車の“カイゼン力”生かし、工場が進化
富士重工業
「ゼロ戦」を三菱重工業よりも多く製造した会社──。「レガシィ」「インプレッサ」などの自動車メーカーとして知られる富士重工業(以下、富士重工)には、もう1つの顔がある。航空機・航空部品メーカーとしての顔だ*1。日経ものづくり
-
独自の「摩擦攪拌接合」で航空機を軽量化
川崎重工業
2015年3月期、航空宇宙事業の売上高が3250億円、営業利益が363億円に達した川崎重工業(以下、川崎重工)。2016年3月期の予想では、同事業の営業利益は川崎重工全体の半分に迫ろうとしており、文字通り収益の大黒柱に育っている。日経ものづくり
-
2020年にはグローバルなティア1へ
住友精密工業
住友精密工業における航空機関連事業の歴史は約1世紀前にさかのぼる。ジェラルミンの研究から始まり、1925年にはプロペラ翼素材の製造を開始した*1。終戦後、10年近くのブランクがあるものの、その後50年以上に渡って航空機向けの部品を開発、生産し続けている。日経ものづくり
-
炭素繊維から中間素材、部品製造にも進出
東レ
10年間で総額110億米ドル(約1兆3000億円)以上の炭素繊維を米Boeing社の「787」と「777X」の機体に供給する──。2015年11月9日、東レは787向けに供給する炭素繊維「トレカ プリプレグ」を777Xの複合材主翼にも適用することで正式合意したと発表した。日経ものづくり
-
独自技術を武器に一点突破、クラスター化で一貫生産を実現
裾野が広く、今後の市場拡大が見込まれる航空機産業への参入をもくろむ中小企業は多い。「技術力が高い日本メーカーには大きな期待を寄せている」(欧州Airbus社)というように、完成機メーカーなども優秀なサプライヤーを常に求めている。日経ものづくり
-
航空機の未来を見る
2050年までに、機体の大部分が透明になっているシースルー航空機を飛ばす──。欧州Airbus社が研究する未来の飛行機は夢のあるものだ。この構想を非常識なものと片づけることはできない。その先駆けといえるものとして、英Virgin Atlantic Airways社が2013年に発表した「glass …日経ものづくり
-
86%が「参入障壁は依然高い」、認証取得や収益化が課題
調査テーマ「日本の航空機産業の現状と未来」
「MRJ」や「HondaJet」といった日系メーカーによる完成機への相次ぐ参入により、国内の航空機向け市場が拡大傾向にある。ただし、今回の調査では航空機産業の参入障壁が高いとする回答が約86%を占め、参入の難しさを示している。回答者は、航空機産業特有の認証取得や投資から収益化までの期間の長さを課題と…日経ものづくり