「日本の『熱意ある社員』5%」「『働く幸せ感じる』、日本は最下位」……。ニュースサイトを見ていると、げんなりするような調査結果が目に留まる。意識調査の国際比較で、日本はなぜこうも低い数字が出るのか。そこにはカラクリがある。書籍『「人気No.1」にダマされないための本』 ▼Amazonで購入する から、最新のデータを加筆して解説する。

仕事への熱意、自己啓発意欲、管理職昇進意欲など、日本は他国と比べて軒並み低いという調査結果が出ているが……(写真/Shutterstock)
仕事への熱意、自己啓発意欲、管理職昇進意欲など、日本は他国と比べて軒並み低いという調査結果が出ているが……(写真/Shutterstock)
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 「日本の『熱意ある社員』5% 世界は最高、広がる差」――。2023年6月14日、米ギャラップがまとめた「グローバル職場環境調査」の結果を日本経済新聞がこんな記事タイトルで報じていた。

 22年に実施した調査結果によると、仕事への熱意や働きがいを実感する社員の割合を示す「従業員エンゲージメント」が日本は5%にとどまり、調査した145カ国の中でイタリアと並び最も低かった。この数字が高いほど社員が主体的に仕事に打ち込んでいることを示し、企業業績や生産性にも好影響を与えるという。

日本は「仕事への熱意」が世界最低クラスと報じられるが……
日本は「仕事への熱意」が世界最低クラスと報じられるが
画像出所:日本経済新聞「日本の『熱意ある社員』5% 世界は最高、広がる差」(2023年6月14日)

 米ギャラップの調査に限らず、日本人の意欲の低さや、「幸せ実感に乏しい」といった調査結果をよく目にする。

 「『働く幸せ感じる』日本は最下位、18カ国・地域で 成長実感が影響」――。こちらは23年6月22日の朝日新聞の記事タイトル。パーソル総合研究所(東京・港、以下パーソル総研)が23年4月に公開した「グローバル就業実態・成長意識調査-はたらくWell-beingの国際比較」の結果を基にした内容だ。

働く幸せを感じる人の割合、18カ国・地域調査で日本は最下位
はたらくWell-beingの国際比較
出所:パーソル総合研究所「グローバル就業実態・成長意識調査 -はたらくWell-beingの国際比較」2023年4月

 世界18カ国・地域を対象に実施したもので、働く幸せを感じる人の割合が最も高かったのはインドの92.6%。次いでインドネシアが90.5%、フィリピン90.1%と続く。ここでも日本は49.1%と最も低かった。同研究所は日本の数字が低い理由として、日本企業の「権威主義・責任回避」体質、就業者の「寛容性」が低いこと、学習投資をしても仕事や働き方の選択肢が広がらない、といった要素を挙げている。

 パーソル総研は22年11月にも就業実態・成長意識に関する18カ国・地域の調査結果を発表している。こちらの数字もなかなか衝撃的だ。「勤務先以外での学習や自己啓発活動」について、「読書」「研修・セミナー」「資格取得のための学習」「語学学習」といった選択肢から複数回答可で選ぶ設問で、日本は「特に何も行っていない」が52.6%と圧倒的に高かった(※全体平均は18.0%)。

勤務先以外での学習や自己啓発活動について「特に何も行っていない」と回答した割合
グローバル就業実態・成長意識調査
出所:パーソル総合研究所「グローバル就業実態・成長意識調査」2022年11月

 また、一般社員・従業員に対し、「現在の勤務先で管理職になりたいか」を尋ねたところ、最も高かったのはインドで90.5%、次いでベトナム87.8%、フィリピン80.6%と続き、日本は19.8%で最下位だった(※全体平均58.6%)。

 仕事に対する熱意は低調で幸福感を得られず、向学心に欠け、出世意欲もない。調査結果を見る限り日本のビジネスパーソンの仕事観にはかなり問題がありそうに見えるが、額面通り受け取っていいのだろうか。

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