【第68回】「代える」「替える」「換える」の使い分け考

近しいモノは「替える」、別モノは「代える」、「換える」は使わない。

この間、「老眼鏡を、新しい度のものに“かえる”」の変換で迷ってしまいまして。
「替える」だろうな・・・とは思いつつも、確信がなかったのです。
「取り換える」でも通るから「換える」のような気がする一方、広い意味の「代える」でも間違っていないんじゃないかと。
そこで、この3つの「カエル」を、改めて調べることにしましたケロ。
   
Webで一般に説明されているのは、
「換える」・・・価値が等しい別のブツにする/服をお金に換える
「替える」・・・新しいブツにする/新しいソファーに替える
「代える」・・・役割を別のブツにさせる/ピッチャーを代える
という内容でした。   
ところが、記者ハンで調べてみると、
投手を「替える」
という用例が載っているのです。言ってることが違うじゃないの。
ピッチャーと投手で異なるのか?
   
「代える」「替える」「換える」に関する毎日新聞の見解
引用したのは、毎日新聞の「コトバ解説」
   
たしかにピッチャー“交代”なんだけど、「新しいブツにする」というニュアンスがなくもなくもない。
だから難しいんですよ。
ここは、独自の運用ルールを決めちゃうしかないですね。
   
まず、記者ハンは「換える」に関して、「替えると書くことが多い」としています。
それなら「換える」を封印しちゃいましょう。
置換とか交換イメージが強い場合に限り使う。
一方、「替える」と「代える」の違いは、両者の性質が同じか否か。
「老眼鏡を、新しい度のものに替える」・・・新しいブツも老眼鏡だから。
「老眼鏡を、コンタクトレンズに代える」・・・ともに異なるブツだから。
これで、しばらく様子をみましょう。って、オレは医者か。
   
念のため、変換が固定された複合動詞で確認してみますか。
建て替える・・・新築ニュアンスですが、間取りとかが違っていたとしても家は家なので「替える」。
すり替える・・・ホンモノとニセモノという差こそあれ、似ているから気付かない。よって「替える」。両替というコトバもありますしね、近しいブツは「替える」。
成り代わる・・・ビミョーだね、これまた。おそらく、見ている人には違いがわかっているんでしょう。主役の急病なんかで代役が出ている感じ。よって「代える」。ピッチャーもこのニュアンスなのかな。誰でもいいときは「替える」、いよいよサンチェの登場ってときは「代える」・・・例えが古いですけども。
代わりばんこ・・・複合動詞ではありませんが、異なる友だちどうしで「代える」。
乗り換える・・・記者ハンは「換える」を指定してきました。こういうときは、素直に従いましょう。
   
最後に、紙の『新明解』のご意見を伺っておきますか。
おや、区別していない。
「代える」が基本で、「換える」「替える」とも書くなどとお茶を濁しています。
明確な区別って、比較的、最近のことなんですかね。
それにしても、毎日新聞といい、『新明解』といい、あながち揺れてるんですね。ますます、独自流用するしかないってわけです。
   
両者の違いが歴然なら「代える」。
似ているブツや、中身の同じ新しいブツは「替える」。
単なる中継ぎ投手なら「替える」。
大魔神のお出ましなら「代える」。
うん、そういう違いも描写できるんだな。
すっごいお気に入りの老眼鏡なら、あえて「代える」を使ってみても良さそうです。「前のブツとは、明らかに違うんだ」という意思表示になります。

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