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医療・健康・介護のニュース・解説

十二指腸潰瘍の症状は?…主な原因はピロリ菌 薬の副作用で発症することも

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 「指を横に12本並べた長さ」が名前の由来の十二指腸は、胃から送られてきた食べ物に 膵液すいえき や胆汁などの消化液を混ぜ、小腸に送ります。食べ物の消化に欠かせない重要な臓器ですが、胃酸の刺激で粘膜が傷つき、潰瘍ができることがあります。(藤沢一紀)

代表的症状は腹痛

 十二指腸の実際の長さは約25センチで、胃の出口にあたる幽門からつながり、膵臓を囲むように「C」の形をしています。潰瘍の代表的症状は腹痛で、空腹時や早朝、夜間にみぞおち周辺が痛みます。再発を繰り返すと患部がすぼまって食べ物の通りが悪くなり、胃もたれや吐き気、食欲不振などを伴います。

 長く放置していると出血し、筋肉の層が薄いため穴が開くこともあります。大量に出血した時は、吐血したり、コールタールのような黒い便(タール便)が出たりします。この場合、緊急手術が必要になることもあります。一方で、症状が全くない人もいます。

 主な原因は、ヘリコバクター・ピロリ菌(ピロリ菌)の感染です。十二指腸の粘膜に慢性の炎症が生じ、胃酸の刺激で潰瘍ができやすくなります。ピロリ菌は、胃の防御機能が成熟していない幼少期に、口から入って感染するとされています。

 かつては菌に汚染された水が主な感染経路でしたが、現在は保菌する家族から口移しで食べ物をもらったり、保育園や幼稚園などで子供同士で唾液が付いたりして感染します。

薬の副作用でも

 薬の副作用でも発症します。アスピリンなどの非ステロイド性抗炎症薬は、胃酸から粘膜を保護する物質を生成させにくくする働きもあり、潰瘍をできやすくします。ピロリ菌由来の潰瘍が減る一方、非ステロイド性抗炎症薬が原因の潰瘍は増えています。このほか、原因不明の「特発性」もあります。

 確実な診断のためには、内視鏡検査をします。潰瘍の状態から活動性や深さを評価し、ピロリ菌感染の有無も判断します。プロトンポンプ阻害薬という胃酸の分泌を抑える薬を6~8週間、内服することでほとんどの潰瘍は治癒します。ピロリ菌の感染を伴う場合は、除菌治療を行います。除菌に成功すると、再発はほぼなくなります。

 非ステロイド性抗炎症薬が原因の場合は、可能であれば服薬を中止します。中止するのが難しい時は、胃酸の分泌を抑える薬や胃の粘膜を保護する薬で改善を目指します。持病のある高齢者の中には、日頃から複数の薬を飲んでいる人もいるため、他の診療科や薬剤師との連携が必要です。

 内視鏡検査で出血を確認した時は、血管をクリップで挟んだり、血管を収縮させる薬を注入したりして止血する治療を行うこともあります。飲酒や喫煙は血流を悪くするので、治療中は避けたほうがいいでしょう。ストレスをためないことも大事です。

 みむら内科クリニック(神戸市)院長の三村純さんは「ピロリ菌の発見と除菌治療の確立で、この菌が原因の難治性の潰瘍はほぼ治癒できるようになりました。内視鏡検査で異常を早期発見することが予防の第一歩です。40歳以上の人には検査を受けることをすすめます」と話しています。

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