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脳梗塞 早期治療につなげるために覚えておきたい言葉とは…発症すると半数に後遺症

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 脳 梗塞こうそく は、脳の血管に血の塊・血栓が突然詰まって起こる病気です。年間で約20万人が発症し、約6万人が亡くなっています。発症すると半数で後遺症が残るとされ、異変を感じたら、一刻も早く適切な治療を受けることが重要です。(辻田秀樹)

主因は動脈硬化

 主な原因は不整脈の一種の心房細動や、生活習慣病の影響で起こる動脈硬化などです。脳の血管が血栓で詰まると、神経細胞が 壊死えし してしまいます。

 脳梗塞は、〈1〉ラクナ梗塞〈2〉アテローム血栓性脳梗塞〈3〉心原性脳塞栓症――の三つに分類されます。

 ラクナ梗塞は、細い血管が詰まるものです。壊死の範囲が小さく、症状も比較的軽いため、気づきにくいですが、認知症につながる恐れがあります。

 アテローム血栓性脳梗塞は、太い血管が動脈硬化で細くなり血栓が詰まるもので、壊死の範囲も広くなります。高血圧や高脂血症、糖尿病などの人によくみられ、食生活の欧米化に伴って、増えてきています。

 心原性脳塞栓症は、心房細動などでできた血栓が脳の血管まで運ばれて起きます。特に主幹動脈と呼ばれる太い血管が詰まると重症化しやすく、速やかな対処が求められます。

 急性期治療には、「t―PA」という点滴薬で血栓を溶かす「血栓溶解療法」と、脚の血管からカテーテルと呼ばれる細い管を入れて血栓を取り除く「血栓回収療法」があります。

 t―PAは、発症後4時間半以内に始める必要があります。時間がたつと脳出血のリスクを高める副作用があるからです。

 血栓回収療法は、カテーテルの先端につけた器具で血栓を引き抜いたり、吸引したりして除去します。それが早いほど、治療効果は大きくなります。

 脳内の広範囲に梗塞ができている患者は現在、血栓回収療法の適応外です。しかし、そうした患者でも血栓回収療法に一定の効果があることを示す論文が今年2月、発表されました。今後の治療指針で適応が広がる可能性があります。また、関連学会が中心になって、カテーテル治療専門医の育成を進めています。

治療に「FAST」

 早期治療につなげるため、覚えておきたい言葉があります。英語の四つの言葉の頭文字を連ねて「 FASTファスト 」と言います。

 最初の三つの文字は、典型的な症状を示しています。Fは「 Faceフェース 」で顔のまひ、Aは「 Armアーム 」で腕のまひを意味し、Sは「 Speechスピーチ 」で言葉の障害を表します。

 そして、Tは「 Timeタイム 」。異変に気付いた時は、脳梗塞を疑ってすぐに119番するという意味です。

 症状が数分から数十分で自然に消えることがありますが、これは軽症の脳梗塞や脳梗塞の前触れである恐れがあるので、決してそのままにはしないでください。

 国立循環器病研究センター脳神経外科部長の片岡大治さんは「速やかな治療開始のためには、一般の方が、脳梗塞の症状や前触れを知っておくことが重要です。再発予防には、処方された薬をきちんと飲むことに加え、高血圧、糖尿病など、再発の危険因子の管理を心がけてもらいたいと思います」と話しています。

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