本記事は、千原せいじ氏の著書『無神経の達人』(SBクリエイティブ)の中から一部を抜粋・編集しています。

やる気,自分自身
(画像=Bastian Weltjen/stock.adobe.com)

「自分は大したことない」と開き直ればラクになる

ええカッコしいとか、相手より強い立場でいたいとか、相手に先手を取られたくないとか、「いい人」に見られたいとか……。そういう裏側の欲求が、おかしな意識や振る舞いを生んでいる気がする。素の自分を見せるのが怖くて、自分を取り繕ったり、マウントをとったりする人も多いんだと思う。

それが僕には不思議。初めから自分のことを「もともと大したやつとちゃう」と潔く認めてしまえば、人と接するときも開き直れるし、素の自分で接するのも怖くなくなると思います。

素の自分を見せたら、いじられるかもしれない?

でも、僕からしたら、いじられるのはむしろ「おいしい」こと。いじられるのは大好きです。それこそ、弟の千原ジュニアなんかが僕のことよく「残念な兄貴」と言ってますけど、ぜんぜん嫌じゃない。

別に、長いこと芸人やってるからってわけじゃなくて、昔からです。いじられるって、なんか、「愛されている感」があるじゃないですか。……僕がこんな言い方したら、気持ち悪いかもしれんけど。もちろん、そこで笑いが起こったらうれしいし。

いじられるのが苦手な人も多いみたいですけど、なんでなんでしょう。

「バカにされている」と思って恥ずかしくなるとか、プライドが傷つくとか? もともと僕は自分の事を「大したやつとちゃう」と思ってるから、傷ついたりすることもないんですけどね。

いじられるのが嫌だという人は、もっと映画を観たり、小説を読んだりしてもいいと思う。つまりは、いろんな世界に触れる。世界にはいろんな人がいて、いろんな考え方があって、いろんな生き方があることを知る。そうしたら、いじりごときで恥ずかしいと感じたり、プライドが傷ついたりすることはなくなるんじゃないですか。

いじりも度がすぎるのはよくないというのは、わかります。けど、自分の欠点なんかも笑い飛ばせたほうが、結果的に生きることがラクになります。相手も、そういう人間には気を許して、素を見せてくれるようになりますしね。

コミュニケーションなんて「普通」でいいのに、それができない。できない原因は、その根底に自信のなさや、「素の自分を見せたらみっともない」「いじられて恥をかくかもしれない」という思いがあるから。でも、そういうプライドが、実はいちばん邪魔なんです。

まあ、思い返せば僕も若いころ、そういう時期がありました。

自分を大きく見せたい、マウントをとりたい、人より優位な立場で話したい。だけど、それはやっぱりしんどいし、人間関係がひずんでくる。ややこしく考えないで「普通」にしていたほうが、ずっとポジション的にもラクだと気づいて、早々にやめたんです。結果、人間関係もスムーズになった。

自分を取り繕ったり、マウントをとったりするのは、エネルギーを使うことなのでかなり疲れます。

スポーツの試合みたいに時間制限があれば、タイムアップが来れば試合終了だけど、人付き合いは一生つづく。じゃあ、一生、取り繕いつづけるの? マウントとりつづけるの? そう考えてみれば答えは明らかでしょ。

これと関係あるのかわかりませんけど、そういえば、僕は最近、あんまり怒らなくなりました。昔はしょっちゅうカッカしてたけど、怒るのも、やっぱりエネルギーを使って疲れる。だんだんラクなほうを選ぶようになって、人間の性質的なところも、ちょっとずつ変わってきたのかもしれません。

最初から「素の自分」を見せちゃう

僕は人と会うとき、まったく緊張しません。初対面でも平気。

若手時代に、お笑い界のレジェンドみたいな大先輩と初めてお会いしたときなんかは、ちょっとは気持ちがピリッとしたものですが、それでも「緊張する」より「うれしい」のほうが優ってました。

緊張しないのは、そもそも「ええカッコしよう」とか「いい人に見られたい」とか「賢く見られたい」とかいう気持ちがないからでしょうね。犬や猫がゴロンって腹を見せるみたいに、最初から素を見せちゃうことが多い。

ただ、これは僕の職業柄、「この相手と、どうしてもお近づきにならなくてはいけない」みたいなケースが、ほとんどないことも関係していると思います。

失礼なやつ、なんかウマが合わないやつ、高慢ちきなやつだと思ったら、付き合わなくても基本的になにも困らない。まあ、そんな人ともうまく付き合うことで、もっともっと仕事が増えることもあるのかもしれませんが……。

上司や取引先の人とうまくやらなくてはいけない立場にある人と僕とは、少し違うのかもしれません。けど、門外漢ながら言わせてもらえば、神経を削られてまで仲よくしなくちゃいけない人なんて、本当にいるの? ストレスでおかしくなりそうでも、いなくちゃいけない場所って、本当にあるの? とは思います。

誰かになにかをお願いしたいというときでも、「どーーーーしても、その人じゃないといけない」というケースは、実は、そんなにないと思う。

世界で唯一の技術を持っている人に力を借りたい場合とかでもない限り、言い方は悪いけど、たいていのことは替えがきくでしょ。なら、「この人、嫌だな」と思ったら、それ以上は無理して取り入ろうとせずに、別のルートを探せばよくないですか?

そう考えたら、人間関係にプレッシャーを感じることは、かなり減るんじゃないかなあ。

好き勝手言って、ごめんなさい。

僕は勤め人になったことがないから、無責任に聞こえたかもしれない。

そう簡単に、今いる場所から抜け出すことなんて考えられないかもしれない。

今の仕事をやめたら即、食うことに困るようになる可能性が高い人だって、きっと多いことでしょう。

でも、「この人と仲よくせなあかん」「この場所にいなあかん」っていうのは、ひょっとしたら思い込みかもしれない。

ちょっと目を向けてみれば、世界はびっくりするくらい広い。

「ほかに、もっと気持ちよく過ごせるような人や場所があるんじゃないか」「意外と自分の素を見せたほうが、関係がスムーズになるんじゃないか」という可能性を、最初から排除することはないと思うんです。

無神経の達人
千原せいじ
芸人。1970年1月25日生まれ、京都府出身。1989年に弟である千原ジュニアとコンビ「千原兄弟」を結成。テレビ番組等の企画等でこれまでに70ヵ国以上を訪問し、卓越したコミュニケーション力が話題となる。2018年にメンタルケアカウンセラーの資格を取得。2021年、貧困・就学困難への支援や国際協力の推進等を主な事業とする一般社団法人ギブアウェイを設立、代表理事となる。著書に『がさつ力』(小学館)、『プロに訊いたら驚いた! ニッポンどうなん?』(ヨシモトブックス)がある。

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