創造力とは?どの職種にも求められる創造性とその鍛え方

創造力、想像力、発想力など、どれも仕事においてよく目にするワードです。いずれも大切ですが、それぞれの違いや役立つ場面は異なります。今回の記事では「創造力」について、株式会社ワーク・ライフバランスの松久晃士さんに、なぜ必要なのか、どうしたら鍛えられるのかを教えていただきました。

創造力とは

「創造力」とはこれまでにないまったく新しいものを生み出す能力のことを言います。そして、この力を最大限に発揮し社会に新たな価値をもたらす創造こそが、昨今どんなビジネスでも求められているイノベーションです(ヨーゼフ・シュンペーター「イノベーション理論」の定義より)。

つまり、創造力とは多くの職場で求められている力であると言えます。決して「私の職場ではそれは求められてない」と誤解しないでください。例えば、総務部門で備品の維持管理をしていたとしても、「この管理方法に、もっといい方法はないだろうか?」「もっと手間をかけずに済ますことはできないだろうか?」と考え、他社の管理方法を調べたり、ゲーミフィケーション※について勉強して仕組みを取り入れたりすることは、創造力の発揮に他なりません。

※ゲーミフィケーション・・・ゲームの要素(レベルアップや参加者間の競争、ミッションの協力など)を用いて業務を行っていく手法

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ビジネスにおける「創造力」とはどのようなもの?

「まったく新しいものを生み出すことなんて、私にはできない」という読者もいるかもしれませんが、心配することはありません。なぜなら、完全に新しく、この世に存在しなかったものを生み出すことはとても難しいからです。私たちにできる「創造」とは「0から生み出すこと」ではなく、すでに存在するもの同士を組み合わせたり、掛け合わせたりして新たなものを生み出すことなのです。創造は「既存の知との出会い」によって生み出すことができるものです。

つまり、「ある分野では当然になっていること(既存の知)が、まったく異なる分野では創造の源となる」ということであり、遠く離れた世界にある「既存の知」との出会いによって、これまでになかったものが生まれる(創造)のです。

例えば、私が普段から利用しているものに「ポスト・イット」があります。当初、ポスト・イットを生み出した3Mでは、粘着力の強い接着剤の研究を行っていました。しかし、できあがったのは「よくひっつくけれど、簡単にはがれてしまう、粘着度の弱いのり」だったのです。

それを本の栞(しおり)に使えないかと考えたことがポスト・イットの誕生につながったと言われています。接着剤の研究開発の失敗(既存の知)が新たな文房具の誕生(創造)につながった事例です。

創造力を高めるために欠かせない行動とは、できるだけ遠く離れた「知」と出会おうと行動することにあると考えます。

想像力、発想力との違いは?

「創造力」に似た言葉として「想像力」と「発想力」があります。「想像力」とは、ひとつの物事をあらゆる側面から推察することなど、心に思い浮かべる力であり、「発想力」は新しい考えやアイデアを思い浮かべる、着想する力です。

創造性の高い仕事(これまでにないまったく新しいものを生み出す仕事)をするためには、あらゆる側面から物事を観察する想像力が欠かせず、ひらめきともいえる着眼・着想による発想力も欠かせない。筆者はこれらの言葉のつながりをこのように捉えています。

創造力はすべての仕事に必要?

創造力を発揮すると、世界中のこれまでの「あたりまえ」を大きく変えてしまうようなイノベーションが生まれることがあります。一方で、日々の業務のような小さな世界においても、創造力を発揮すると明日からの仕事や生活が変化していくことがあります。

筆者はこれまでに1万人以上のビジネスパーソンに、働き方に関する助言を提供してきましたが、様々な業種・業界の支援をしながら「すべての業種・職種に創造力は欠かせない」と確信しています。

市場の変化に対応するために

ビジネスシーンで創造力が求められる最大の理由は、市場変化に応じるためです。新しい商品やサービスの開発といった創造性はもちろんのこと、既存の商品やサービスを新たな顧客に販売することや、別の市場に展開することにおいても創造性が求められます。

例えば、農業用のマイクロバブル発生装置を美容室のシャワーに展開している成功事例がありますが、これも既存の技術を新たな市場に展開する創造力の発揮であると言えます。

より効率的に働くために

生産性向上の観点でも、創造力の発揮は欠かせません。日本では労働力人口が減少に転じ、今後ますます人手不足が深刻化していくことが予測されています。

女性やシニア人材の活躍等の取り組みによって、働き手・担い手を増やしていくことはもちろんのこと、これまでの業務プロセスを見直したり、働き方改革を進めたりすることも必要です。より少ない人材でこれまで以上の成果を出すには、創造力は欠かせないものと考えます。

創造力を鍛える5つのポイント

すべての仕事に欠かせない創造力。この力を伸ばすことは誰にも可能です。すぐに着手することができる5つの方法をご紹介します。

  1. 「仕事ばかりしている人」から抜け出す
  2. 睡眠の質と量を高める
  3. 枠の外の世界に触れる時間を持つ
  4. 本当にやりたいこと/楽しいことを実践する
  5. 他者との協働でさらに創造力を磨く

創造力を鍛えるポイント①「仕事ばかりしている人」から抜け出す

「仕事ばかりしている人から抜け出す」ことが一つ目のポイントです。特定の仕事に没頭している・集中することで、その分野の専門性を高めることができます。しかし、「その領域しか知らない」というデメリットも持ちます。つまり、「幅の広がり」がもたらされません。

「ワーク・ライフ・シナジー」、つまり「ワーク」と「ライフ」の好循環が、仕事上でも相乗効果をもたらします。仕事以外の体験や知識、技術が今の仕事に還元されるという経験は多くの方にあるはずです。まさに「遠く離れた既存の知」との出会いが、創造力を高めてくれているのです。

創造力を鍛えるポイント②睡眠の質と量を高める

次に「睡眠の質と量を高める」ことです。ドイツのリューベック大学の研究によって、8時間睡眠を取ったグループの創造性(洞察力)が高まることが示されており、カリフォルニア大学とウィリアムズ大学の研究では、睡眠時間が1時間伸びるほど収入が5%高まることを示しています。つまり、睡眠の質と量を高めることは、創造力を高め仕事における成果を大きくできると考えられます。

創造力を鍛えるポイント③枠の外の世界に触れる時間を持つ

三つ目は「枠の外の世界に触れる時間を持つ」ことです。一つ目のワーク・ライフ・シナジーに通ずる発想であり、「遠く離れた既存の知」と出会うための方法です。いつもと同じ世界(枠の中)にいては、遠く離れた既存の知とはなかなか出会えません。

いつもとは違う道を歩く、本屋さんで気ままに本を選んでみる、「興味がない」と思っているスポーツ・音楽も誘われたら経験してみる……そんな「少し外の世界」に踏み出すことも、創造力を高めるための行動であると考えます。

創造力を鍛えるポイント④本当にやりたいこと/楽しいことを実践する

四つ目は「本当にやりたいこと/楽しいことを実践する」というものです。主体的に、自らそれをやりたいと思って行動しているときこそ、脳が最も楽しみ、喜んでいる状態です。この時間を大切にしましょう。もちろん、仕事以外のことです。

特に、長期間にわたり長い労働時間を強いられていた方は「やってみたいこと」「行ってみたい場所」「見てみたい景色・映画・本」などを忘れてしまっていることがあります。かつて興味があったことも、長い間仕事以外の時間を持つことができず「蓋をしてしまった」状態になっているのです。少しずつ思い出してみましょう。仕事から解放されたら、どんなことを試してみたいですか?

創造力を鍛えるポイント⑤他者との協働でさらに創造力を磨く

最後のポイントは「他者との協働でさらに創造力を磨く」というもの。創造とは「遠く離れた既存の知と出会う」ことで生まれるため、一人で考え込むのではなく、誰かと一緒に考えることで、これまでになかった着眼・着想に触れ、新たな創造を生み出せる可能性が高まります。

もちろん「話せばいい」という単純なことではありませんが、いつも一緒にいる人にもっと好奇心を持ってコミュニケーションを取ったり、これまでの/これからの人生ではなかなか出会うことのないタイプの人と話す機会を設けてみたりと、これまでの4つのポイントを踏まえながら行動していくと、創造力をさらに磨くことができます。

5つのポイントはどんな場面で実践できる?

これらの5つのポイントを試すことのできる行動を考えてみましょう。筆者がおすすめしたいのは、地域社会への参画をすること、夫婦ともに育児休業を取得することです。

地域社会の活動への参画は、「同じ地域に住んでいる」という共通点があるだけで、一人ひとりに大きく異なる仕事・暮らし・価値観・人生観があります。地域の活動に参加し、年齢や性別、価値観が異なる方々との接点を作ることで新たな扉が開きます。

とはいえ、そうした活動に参加するにはある程度まとまった時間や、その後簡単に抜けることが難しいなどハードルもあります。そのような場合、例えばエレベーターやゴミ出しで挨拶をすること、また日頃通っているジムでよく見る人に話しかけるといったことから始めても構いません。「今日は暑いですね」と天気の話をしてみるなど、接点・機会を設けると、思わぬところでコミュニティが広がるかもしれません。ほんの少しで構わないので「これまでにない行動」「枠の外にある世界」に手を伸ばそうとしてみてください。

また、育児・介護休業法の改正により、男性も育児休業が取得しやすくなっています。仕事以外の時間が増えるため、これまでとは異なる暮らしがあり、異なる人たちとの出会いもある、絶好の機会です。

世代を越えた様々な人たちとの対話を楽しみながら自らの人生の幅を広げていくことで、創造力を高めることができます。

AI時代にこそ求められる創造力

私たち人間だからこそ持ち合わせている力の一つに「創造力」があると筆者は考えています。AIによって仕事の進め方はこれからますます大きく変化していくことが予想されますが、それはつまり、人にしかできない思考(創造性を発揮すること)にもっともっと集中していくことのできる時代へと移り変わっていくと捉えることもできます。どんな仕事においても、どんな暮らしにおいても、創造力はいつも私たちを豊かに、幸せにしてくれる存在です。

目の前にあふれるタスクに向き合う手を止めて、今回ご紹介した「遠くにある既存の知」との出会いを求める旅に出てみることをおすすめします。人生に幅をもたらしてくれる探索活動によるたった一つの出会いが、タスクのすべてを消し去ってくれる可能性さえもっているのです。自分でいつの間にか作ってしまった「枠」から抜け出して、できる限り遠くにある「知」に出会いにいきましょう。

【プロフィール】
松久晃士(まつひさ こうじ)
株式会社ワーク・ライフバランス執行役員。二児の父。1万5千名以上のビジネスパーソンに働き方改革のアドバイスを提供。中央省庁・自治体・警察組織・研究機関など特殊性の高い業種・職種における働き方改革の支援にも定評がある。2016年から静岡県三島市に移住し、家族4人で地域活動などにも積極的に参加する。在宅勤務と長距離通勤を織り交ぜながら自らのワーク・ライフバランスを整え、累計10カ月にわたる育児休業経験もあるため、働き方改革に関して独自の目線と実体験を有する。
松久晃士|ワーク・ライフバランス公式プロフィールページ

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